捨てられる銀行 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2016年5月18日発売)
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本棚登録 : 981
感想 : 108
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これも数年前の話題の本。

勝手に、経済学者が銀行業界の行き詰まりの原因と現状を分析した本だと思っていた。
が、著者は、経済、特に金融庁を専門とする記者。
本書は、近年の金融庁の方針転換をドキュメンタリーとしてまとめたものだった。

少子化によるマーケットの縮小で、地銀どころかメガバンクさえ、最近行員の削減やら、統廃合で喧しい。
バブルの不良債権処理を、金融庁指導のもと、マニュアル化して進めてきた結果、地銀が地方経済を支える金融の役割を果たさなくなった。
(この辺り、半沢直樹で陰湿な金融庁監査の話が頭をかすめる。あれはメガバンクという設定だったけど。)
目利き力も、コンサル能力も失った。
いわば、失政だ。
それを立て直そうとした金融庁の関係者の奮闘が描かれる。

ただ、彼らの理想がうまくいかなかったくだりには、ど素人ながら、やっぱりね、と思ってしまう。
中小企業に密着して取引関係を築くリレーションシップ・バンキングを金融庁は解禁する。
アイディアも技術もあるのに資金がなくて潰れていく地方の優良中小企業が救える、と見込んでの改訂だ。
ところが、実際に動いたのは余力のあるメガバンクだけ。
筆者は、地銀の側に原因を求める。
勿論、しっかりした取材に基づき、地銀の問題点を指摘するのだが、金融庁の施策の側に問題はないのか?と素朴に思ってしまう。
理屈ではそうかもしれないが、地銀の機能不全は起こるべくして起きていて、それに対するアプローチがかけている理想論だったのではないか?なんて思ってしまうのだが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年5月30日
読了日 : 2018年5月30日
本棚登録日 : 2018年5月30日

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