分解 (ちくま文庫 さ 34-1)

著者 :
  • 筑摩書房 (2010年2月9日発売)
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本棚登録 : 150
感想 : 18
4

『ピュタゴラスの旅』からの二編をはじめとする、今や入手困難な作品を文庫化したものだそうだ。
確かに『ピュタゴラスの旅』は読んだけれど、それ以外は初めて。
それにしても、本当に酒見賢一さんは幅の広い作家だと思う。

表題作「分解」。
語り手は分解者の先達として、分解の技術を指南する。
そのレッスンの様子が延々と語られる。
分解者なるもには、いったい何者なのか。
まったくわからないままに、だ。
最初の授業は拳銃の解体、次に人体、と進んでいく。
あおれぞれのパーツが頭に描けないので、ここで挫折するかと思った。
が、その後、人間の意識の解体、小説の解体へと進むと、俄然面白くなった。
メタ物語というか、批評性がくっきりと見えてくる。
すごい作品だと思った。

縁を結ぼうとている男女の背後で、祖霊たちがドタバタを繰り広げる「泥つきのお姫様」は抱腹絶倒。

中国伝説時代、治水に携わった鯀、禹を扱った「童貞」も、興味深いという意味で面白い。
ミソジニーが現れた作品と言えなくはないけれど、女系社会だったという古代社会がどんな風だったか、いろいろと想像を掻き立てられる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年10月14日
読了日 : 2017年10月14日
本棚登録日 : 2017年10月14日

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