『ピュタゴラスの旅』からの二編をはじめとする、今や入手困難な作品を文庫化したものだそうだ。
確かに『ピュタゴラスの旅』は読んだけれど、それ以外は初めて。
それにしても、本当に酒見賢一さんは幅の広い作家だと思う。
表題作「分解」。
語り手は分解者の先達として、分解の技術を指南する。
そのレッスンの様子が延々と語られる。
分解者なるもには、いったい何者なのか。
まったくわからないままに、だ。
最初の授業は拳銃の解体、次に人体、と進んでいく。
あおれぞれのパーツが頭に描けないので、ここで挫折するかと思った。
が、その後、人間の意識の解体、小説の解体へと進むと、俄然面白くなった。
メタ物語というか、批評性がくっきりと見えてくる。
すごい作品だと思った。
縁を結ぼうとている男女の背後で、祖霊たちがドタバタを繰り広げる「泥つきのお姫様」は抱腹絶倒。
中国伝説時代、治水に携わった鯀、禹を扱った「童貞」も、興味深いという意味で面白い。
ミソジニーが現れた作品と言えなくはないけれど、女系社会だったという古代社会がどんな風だったか、いろいろと想像を掻き立てられる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年10月14日
- 読了日 : 2017年10月14日
- 本棚登録日 : 2017年10月14日
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