人類学のコモンセンス: 文化人類学入門

著者 :
制作 : 浜本満  浜本まり子 
  • 学術図書出版社 (1994年4月1日発売)
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感想 : 3
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文化・自然・性差・血縁・子供観・死・けがれ・暴力・交換・個人・歴史という11のテーマについて、現代日本人にとって常識的なイメージを再考、もしくは相対化するよう、人類学的な知見をもとに書かれている。…という、まさにこういった実践こそが、「人類学のコモンセンス」なのであり、このテキストを読んで「ははあ、人類学者というものはこういう思考のしかたをするのだなあ」と理解してもらう、というのが狙いのようだ。ちなみに、「コモンセンス」という言葉は「常識」と意訳されてしまいがちのようだけど、ここではそのまま「共通感覚」と考えたほうがいい。
それにしても、各章を8人で分担して書いているのだけれど、どの章も同じように面白いうえに、同じようにわかりやすい。それはどの章も、人類学的な「発見」ばかりに依っているのではなく、現代日本においてもじつは日常の隅で見られる変哲ない出来事を具体例に取り入れることで、われわれ読者が馴染みやすいよう努めて書かれているからだと思う。
でも、あとがきには以下のようにある。

自分たちにとって当たり前のことが必ずしもすべての人にとって当たり前ではないということを知るのは決して容易ではありません。人類学者が長い時間をかけて身につける〈人類学のコモンセンス〉を、初めて人類学を学ぶ皆さんにわかって頂きたい、できれば共有して頂きたいというのはあまりにも欲深です。ですから、実際のところ、人類学の「基礎用語」や学説を理解するよりも困難な要求を皆さんに突き付けているのです(pp.206-207)。

僕にとっては基礎用語や学説よりもずっとわかりやすかったし面白かったんだけど、これは僕が多少なりとも人類学の勉強をしてきた、という証左なのかなあ。学徒としてあまり真面目ではないと思うんだけど。とにかく人類学の入門書としては、基礎用語や学説について説明された本より、僕はこれを薦めます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 学術書
感想投稿日 : 2009年11月19日
読了日 : 2009年11月3日
本棚登録日 : 2009年11月3日

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