古代の宗教から現代の科学(ミトコンドリア・イヴとY染色体アダム)、政治から社会、思想から文化、文学から芸術まであらゆる領域に跨って浸透し、根底で生き続けてきた神話のなかの神話であるアダムとイヴについて眺めていく内容となっています。
本書の魅力は一つの見方のみに囚われることなく、例えば旧約聖書を寓意的に解釈しようとしたアレクサンドリアのフィロンから見たアダムとイヴ、逆に旧約聖書を実際にこの地球上で起こった事実であったと解釈しているヒッポのアウグスティヌスから見たアダムとイヴ、グノーシス派の解釈から見たアダムとイヴ、そのほか両性具有説や男尊女卑派及び対等派等々多くの視点を、これまた多くの芸術作品や文学作品を交えて概観していく内容となっており読者の視野を拡げてくれるところにあるかと思います。
また後半はアダムとイヴの二人の子供であるカインとアベルにもスポットが当てられ、さらにアベルの生まれ変わりとして誕生するセツ(セト)にまで世界は膨らんでいきます。
本書の序盤で語られる「主なる神は土の塵で人を形作り、その鼻に命の息を吹き入れられ、人はこうして生きるものとなった。さらに続いて神は東方のエデンに園を設え、そこにアダムを連れてくる。ということはつまり、アダムが生まれたのは楽園の中ではなくて外になるわけだが…」という一文に惹かれる方ならば最後まで楽しみながらあっという間に読み終えることができる一冊かと思います。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年7月16日
- 読了日 : 2017年7月15日
- 本棚登録日 : 2017年7月15日
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