宝石商シリーズ第9弾。謎多きスパイのヴィンスの過去と珊瑚について。
オクタヴィアの話は薄め。
スリランカの暴動にショックを受ける正義。
治安悪化により、日本へ一時帰国することに。
海外生活を経て日本に戻ると、そこには何もなかったかのような日常があり、自身の体験を共有できる人が少ないことに気づく正義。
同級生は企業人として慣れない社会人生活を送り、海外でのびのびしている(ように見える)正義にやっかみの感情を向ける。
養父が海外生活に理解がある人でよかったね。
マリアンから情報をもらい、ヴィンスのいる香港へ向かう。
香港は行った事ないけど、香港は関税がかからないから、宝石が集まる街だとテレビで言ってたな。
ヴィンスが語るリチャードの人物像が腑に落ちない正義。ヴィンスは、リチャードは正義に会って変わったという。
ヴィンスは劣等感や家族の問題でリチャードに与えることができなかったが、正義は自然とやってのけた。リチャードになんの含みもなく優しく接する「友達」みたいな感じ。
正義は自分がリチャードに影響を与えた自覚はまるでないけれど、それこそが才能。運命の出会いというんだろうなぁ。
裏表紙に「この世界にはさまざまな愛が溢れている。」とあるけど、まさにこの巻は愛の形についてがテーマだったように思う。
ヴィンスのマリアンへのわかりにくい愛の示し方。
石は好きだが性愛について食指が動かない谷本さん。
リチャードを大切だと思う気持ちが、何に該当するか確信が持てない正義。
元婚約者が離婚したと聞いたリチャードは、未練はあるが、過去の記憶と現在まで手に入れたものを手放す喪失との間で揺れる。
単純ではない人間の感情と理性の混じった何かが、行動パターンを複雑にしている。
グローバルな国籍と肩書と経歴の持ち主達が愛の形についてぐちゃぐちゃと悩んだり、覚悟したり、行動してみたりと、いろんな事をしているので、世界どころか家からも出ていないこの狭い環境の中だけど、世界を股にかけたような気になる。
- 感想投稿日 : 2020年5月12日
- 読了日 : 2020年5月8日
- 本棚登録日 : 2019年9月12日
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