なぜ、この人と話をすると楽になるのか

著者 :
  • 太田出版 (2015年1月31日発売)
3.38
  • (79)
  • (148)
  • (204)
  • (68)
  • (21)
本棚登録 : 2535
感想 : 217
3

ラジオパーソナリティーを務める、アナウンサーで、中央区立泰明小学校、麻布中学、麻布高校、慶應義塾大学文学部卒という立派な肩書きを持つ吉田さんも、元々人と話すことが苦手なコミュ障だったという。
その彼がアナウンサーという職を経て、どうやってコミュ障を克服したか、という経験を語っている。

ハウツー本のようにポイントがまとまっているわけではないけれど、時系列に沿って話されているので、ビジネス本より小説が好きと言う人は、こちらの方がすんなり読めると思う。

吉田さんは元々知らない人と話すのは得意じゃなかったけれど、インタビュアーというアナウンサーの仕事の中で失敗と反省を繰り返すことによって、いつの間にか、つまらないと言われたらどうしようとか、そう言った自己顕示欲が無くなっていた、という。

コミュ障を克服するために自信を持とう的な回答が多いらしく、まぁみんなそれが出来ないから悩むワケで…。

結局の所は千本ノック。
自分の経験値を積んで慣れること、面白いと思われたい、変なやつと思われたくないという自己顕示欲をコミュニケーションで昇華しようと思わないこと。だと思った。
これができるまで実践とモニタリングをするしかない。
早く会得できるか時間がかかるかは本人の性格と大きく関係するけど、やはり行動実践しなければいつまでも本人の自信に繋がらない。
恥をかいてなんぼ、というのに納得できない吉田さんは、そこでなるべく早く会得できるように、と色々と技術を書いている。
が、相手に興味を持つ、相手の話をちゃんと聞く、興味を持つ感度のハードルを下げる、否定しない、自慢しない、嘘をつかない…
これらは正直、何かの自己啓発本で何度も見たやつ…と思わなくもない。
ただ、結局、コミュニケーションを苦手と感じる気持ちを何とかする為の基本はコレで、避けては通れないってことなんだろうね。

コミュ障の定義として、友達とは緊張しない、親しくない相手との雑談を苦痛に感じてる人の事を指すのよね。
そして、無理矢理知らない相手に興味を持とうとすることが苦痛、面倒だからさらにコミュニケーションが苦手と感じるわけで…
自分は朝活という、営利が絡まない練習場所を見つけられたことで大分救われたし、吉田さんも仕事という逃げられない環境だったからこそ必死で頑張ったワケだし。
だから、営業に配属になってしまった、知り合いがいないグループに入ってしまった、こういった環境はある意味チャンスかもしれない。
自分のいる場所の居心地を良くするためなら一生懸命努力できるもの。

人間社会で生きる限りログアウトできないのだから、そこで楽しくコミュニケーションを取れた方が生存率も上がる。とのこと。

基本的な話を聞く、といった普遍的な手段はおいといて、吉田さんはその地道な行動をするためのハードルを下げる為に、コミュニケーションを全員協力型ゲームに見立てているのが斬新だった。

参加者全員で気まずさという敵を追い払い、ビックリさせる/喜ばせる/感動する/笑わせる/教わる/といった勝利条件を達成する。
そういう目的をもってコミュニケーションを楽しもう、という。
まぁ会話している最中にそこまで意識できるかっていうとアレだけど、時たまに意識して、えっなにそれ?って質問してみるとか、相手をしゃべらせる事に意識がいっただけでも確かに成長したなと思う。
そこからいかに繋げていくかは、なぜコミュ障から脱却したいと思ったか、という自分自身の目的がどれだけ明確になるか、だと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス・金融
感想投稿日 : 2020年8月10日
読了日 : 2020年8月10日
本棚登録日 : 2020年8月4日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする