それからの海舟 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房 (2008年6月10日発売)
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感想 : 31
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「行蔵は我に存す、毀誉は他人の主張、我に与らず我に関せずと存候。」どうでい!福沢よ!
勝海舟の、江戸城無血開城後は「氷川清和」に詳しくその心中が語られていますが、半藤先生の勝論、また未だ未読であるじいさんの日記等から意外と内に秘めるタイプであったじいさんの姿を感じ取りました。他資料とつなぎ合わせて浮き出てくるその情景、また勝のセリフ。男気に、また新しい勝像を頂いた気分です。半藤先生の勝っつぁん大好き!も微笑ましく読みました。
壬生義士伝に「徳川の殿軍おつとめもっす」という吉村のセリフが出てきます。勝海舟のその後の人生は、まさに「徳川の殿、の殿、の殿」ともいえるものだなあ!御家人たちの仕事の世話、お金の世話、住居の世話、はたまた忠誠心のやり場の世話。勝が新政府に送り込んだエリートたちは後の明治政府、特に軍内でその基礎を作ることに奔走します。太平洋戦争史をあわせて読むと、開戦強行派、外交による調和派は、多くが元官軍、元賊軍に分けられると言います。勝じいさんもまた、日清戦争、支那国に対して軽蔑を送る世論に大いに反発、警告する。そう、警告。まさにこのままそんなこと言って支那と戦を続ければ、欧米から非難を浴びて国際的に孤立するヨ。それで今度は欧米と戦でもする気かね。国が滅びちまうよ。と言う警告です。じいさん、すげえ!!かつて江戸で市民の血を流すことなく戦を終わらせた慧眼を持つ勝海舟にしてみれば、猛進猪野郎どもの馬鹿さ加減が、氷川の隠居宅からよくよく見えていたんだろうなあ〜!。

世の人が何を言ったって、自分のなすことは自分にしか分からない。また世の人が何を言うかなんて、俺は知らないヨ。
それでも最後の最後、殿を勤め上げた海舟の、奔放する姿、愛おしく、また頭の下がる想いです。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 明治大正の本
感想投稿日 : 2010年4月28日
本棚登録日 : 2010年2月17日

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