ある種の難解さを素晴らしさと取り違えている時期があった。本書を冒頭から素直に読めば、それが無根拠な暴論でしかなかったことに気づく。
「かろやかな翼ある風の歌」は、「或る青年は、風になりたいとつね日ごろ希つていた。そこで彼は風になつた」者特有の恋患いを描いているかに見え、その実我々が恋する人を前にした苦悩を極めて見事に抽出してくれたのではなかろうか。
解説で松浦寿輝が強調しているように、甘ったるい「幼稚なナルシシズム」の世界として切り捨てるのではなく、そこに「独自の魅力的な日本語の音楽性」を聴きとりたい。
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- 感想投稿日 : 2011年6月8日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年6月8日
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