1990年代のベストセラー『人間を幸福にしない日本というシステム』などで知られるオランダ人ジャーナリストと、『永続敗戦論』の白井聡による対談集。
「ま、この2人が対談すればこういう話になるわなァ」という予想の範囲内に収まる内容で、目からウロコが落ちるような驚きはない。
それでも、随所に卓見があり、一読の価値はある本だ。とくに、舌鋒鋭い安倍首相批判にはある種の痛快さがあるし、日本がずるずると続けている対米従属姿勢が、いまや完全に時代遅れになっているとの指摘は傾聴に値する(『永続敗戦論』の反復ではあるが)。
いわく――。
《いまでもアメリカの属国状態が続いている。いくら政権交代をしたところで意味はない。結局、アメリカが認める範囲内でしか政策の選択肢がない。(白井の発言)》
《官僚たちは、アメリカがすっかり変貌したという事実に目を向けていないのです。“昔のアメリカ”をベースに物事を考えている。だから、今でも対米従属が日本の利益に適うと信じ、全く疑おうとしない。(ウォルフレンの発言)》
あと、「ほんとうにそのとおりだ」と思ったのは、白井の次のような指摘。
《右翼は朝日新聞を嫌いつつ、実は過大評価してしまっているのです。日本の国際的評価を左右したり、内閣を潰すほどの力があると考えている。それこそ幻想に過ぎません。むしろ過去10年、20年にわたって、朝日の影響力は衰え続けている。(中略)
ところが右翼はそうは考えません。朝日新聞やNHKといった大メディアが、今でも日本のリアリティを形づくっていると信じている。》
暗い話が多くて気が滅入る本ではあるが、質の高い対談集だ。
- 感想投稿日 : 2018年10月6日
- 読了日 : 2015年6月12日
- 本棚登録日 : 2018年10月6日
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