『芸術新潮』(2014年1月号)のつげ特集を一部増補し、再編集したムックである。
『芸術新潮』の特集は、「紅い花」「外のふくらみ」の原画全ページがそのまま印刷され、掲載されたことが話題をまいた。つまり、ホワイトの跡、ネームの写植を貼った跡、青エンピツによる網掛けの指定、セロテープの跡、細かいシミなどをそのまま見ることができ、生原稿を手にとって見るような臨場感をもって名作を味わうことができるのだ。
このムックはその2作のほか、「ねじ式」「ゲンセンカン主人」の原画全ページも収録。ほかに、「無能の人」「李さん一家」「海辺の叙景」も、一部のページが原画で掲載されている。
『芸術新潮』のほうがより原画に近い大きなサイズであるわけだが、私はこちらのムックのほうが保存版にふさわしいと思う。
つげが旅先で撮影した写真を中心に、1966~76年の「旅人時代」(つげが頻繁に旅していた時代)を振り返った「旅で撮る 旅を描く」というコーナーがあるのだが、写真の量は『芸術新潮』の3倍になるなど、ボリュームアップしている。
美術史家・山下裕二(明治学院大学教授)によるつげへの4時間ロング・インタビュー、つげの大ファンだというマンガ家・東村アキコへのインタビューなども再録。
山下は本書の編著者であり、ほかにも「初めての人のためのつげ義春Q&A」というコーナーに登場している。いずれも、つげへのリスペクトに満ちたいい内容だ。
また、東村へのインタビューは、徹底した「つげマニア」ぶりが笑いを誘い、これまた面白い。
総じて、つげ義春ファン必読・必携という感じの本に仕上がっている。
- 感想投稿日 : 2018年10月8日
- 読了日 : 2014年12月12日
- 本棚登録日 : 2018年10月8日
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