日本復興計画 Japan;The Road to Recovery

著者 :
  • 文藝春秋 (2011年4月28日発売)
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感想 : 139
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 東日本大震災直後にYouTubeを通して広まり、話題をまいた「大前研一ライブ」の内容をベースにした本。

 MITの原子力工学科で博士号を取り、日立で原子炉プラントの設計に携わったという経歴の持ち主だけに、原発事故についての解説は鋭い。3月13日(つまり福島第一原発の水素爆発の翌日)の段階で現状をほぼ正確に見通していたことに驚かされる。
 私も「大前研一ライブ」をYouTubeで観たクチだが、それでも、本として新たに読み直すだけの価値があった。

 ただ、本書の大半は原発事故の解説と原子力政策の展望に割かれているので、『日本復興計画』というタイトルはいささか羊頭狗肉と感じた。正味120ページほどの薄い本だから、復興を論じた部分も駆け足で食い足りないし……。

 あと、大震災の3ヶ月前に出た前著『お金の流れが変わった!』で、大前は“日本の優れた原発技術を海外に輸出して大きな利益を上げよ”とか、「首都圏近郊に原発を作れ」などと提言しているのだが、そのことについてのエクスキューズが本書に絶無なのはいかがなものか。
 本書の印税は放棄して復興に役立てるそうだから、そのこと自体がエクスキューズの意味をもっているのかもしれないが。

 ……とまあ、そのように小瑕のある本ではあるが、傾聴に値する卓見も多い。

 たとえば、「誰も気づいていないことだが、実は世界の中で日本だけが二十年間貧乏になり続けている」との指摘(110ページ)には唸った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 東日本大震災関連
感想投稿日 : 2018年11月2日
読了日 : 2011年8月10日
本棚登録日 : 2018年11月2日

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