ベスト・オブ・映画欠席裁判 (文春文庫 ま 28-2)

  • 文藝春秋 (2012年3月9日発売)
3.85
  • (36)
  • (81)
  • (34)
  • (7)
  • (4)
本棚登録 : 501
感想 : 62
4

 「ファビュラス・バーカー・ボーイズ」を名乗ってコンビで活動していた映画評論家2人(本書では「ウェイン町山」と「ガース柳下」)による、掛け合い漫才形式のトーキング映画評。既刊の単行本版『映画欠席裁判』3冊からセレクトして1冊にしたベスト本である。

 テンポのよい快調なやりとりがつづくので、550ページを超える厚い本をあっという間に読み終えてしまった。ものすごいリーダビリティ。

 一見バカ話のようでいて(いや、じっさいバカ話も多いのだが)、随所に映画好きを唸らせる深い一節がちりばめられている。たとえば、『千と千尋の神隠し』を取り上げた回など、宮崎駿論としても傾聴に値する内容だ。

 また、映画豆知識も山ほど盛り込まれていて、意外に「ためになる」本でもある(町山の『ブレードランナーの未来世紀』などに書かれていた話も多いけど)。

 駄作や失敗作、映画業界の現状への苦言も多いが、映画評論家としてまっとうな仕事をしているという著者たちの自負が根底にあるため、不快な悪口にはなっていない。たとえば、次のような町山の発言はしごくもっともだと思った。

《評論家の仕事は、まず作者が意図したことは何かを作者本人の言葉や資料を通して確認すること。その次に、作者の意図を超えた論を展開することなんだけど、その一番目の仕事をやらないで自分の感想だけ書いてる評論家がいかに多いか。》

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 映画本
感想投稿日 : 2018年10月24日
読了日 : 2012年8月13日
本棚登録日 : 2018年10月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする