僕の樹には誰もいない

著者 :
  • 河出書房新社 (2022年10月26日発売)
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本棚登録 : 54
感想 : 7
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昨年3月に亡くなった著者の、最後の著作だ。闘病中、“生きているうちに10冊目の著書を出したい”と準備を進めていたものだという。

読後、「やはり音楽評論家として替えのきかない人だった」との思いを強くした。

例によってビートルズ・ネタが中心だが、幅広い音楽が取り上げられている。そして、自らの日常描写と音楽話が、シームレスに登場する。

よい意味でゆるい、飄々とした文章だが、真似のできない味わいがある。評論然とはしていないが、ロックについての卓見が随所にある。

本書の最後に近づくにつれ、収録エッセイに病気と死の影が濃くなっていく。
ラス前が「生きていこう」、ラストの一編は「 Still Alive And…」というタイトル。とくに後者は『ロッキング・オン』への最後の寄稿文(2021年10月号)であり、ファンと読者への別れの挨拶のような内容だ。それでも、飄々としたタッチはいつもと変わらない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 音楽本
感想投稿日 : 2023年1月25日
読了日 : 2023年1月25日
本棚登録日 : 2023年1月25日

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