どこにでもあるボールペンだけを使って、『古事記』を完全マンガ化しようという壮大な試みの第1巻。
近藤ようこも先月『恋スル古事記』というのを出したし、マンガ界は時ならぬ『古事記』ブームなのかな(※)? タコツボ化して痩せてしまったマンガの物語世界に新風を吹き込むべく、「日本の物語の原点」まで遡ってみよう、ということなのかもしれない。
※あとから気づいたが、今年は「古事記編纂1300年」のメモリアルイヤーなのだね。
すべてをわかりやすくマンガ的に説明していた水木作品と比べ、本作にはわかりにくさが残っている。
というのも、『古事記』の原文を(書き下し文の形で)そのままセリフとト書きに用いているから。
随時脚注が付されていくものの、それは最低限にとどめられ、「このくらいは原文だけでもなんとかわかるだろう」というところはそのまま突き放されている。
ゆえに意味の取りにくい部分もあるが、絵とともに読めば理解できないことはない。そして、理解する努力を払うことによって、読者はより深く『古事記』の世界を味わうことができる。
……などというと小難しい作品だと思われてしまうかもしれないが、そんなことはない。
出てくる話はみんな知っているわけだし(本巻は国産みから天岩戸、ヤマタノオロチのエピソードまで)、こうの史代作品が好きな人なら、このマンガも絶対に楽しめるはずだ。
たとえば、イザナギとイザナミのエピソードは、ほかのこうの作品に描かれるラブストーリーの感覚そのままで読むことができる。
神様たちの多彩なキャラクターづくりにも、工夫があって面白い。
- 感想投稿日 : 2018年10月22日
- 読了日 : 2012年11月22日
- 本棚登録日 : 2018年10月22日
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