ご多分にもれず、私も子どものころ秘密基地に憧れたものだった。山の中にそれっぽいものを作ったこともある。
「秘密基地」とは何かというと、家とは別の、仲のよい子どもたちだけでひそかに集える場所の謂である。
私が子どものころ――つまり1970年代前半くらいまでは、マンガや少年小説などによく秘密基地のたぐいが登場した気がする。
たとえば、大石真の児童文学『教室二◯五号』(学校の物置小屋の奥に地下室を発見した少年たちが、それを自分たちの「秘密基地」にする話)とか、くだけたところではとりいかずよしのマンガ『トイレット博士』に登場する「メタクソ団」の部室(メタクソ団は校庭にひそかに地下室を作って部室にしている)とか……。
なぜ昔の少年たちがこぞって「秘密基地」に憧れたかといえば、おそらく日本の貧しい住宅事情の反映であったろう。仲間たちだけで自由に過ごせる場所を持っていなかったからこそ、「秘密基地」を持ちたがったのだ。
さて、本書はタイトルのとおり、いまの大人たちがさまざまな形で実現した「秘密基地」的空間を探訪し、紹介していくものである。
個人の家から店舗やシェアオフィスまで、ツリーハウスから手作りキャンピングカー(トラックの荷台に手作りの2階建て住居を載せ、“移動秘密基地”と化したもの)まで、さまざまな「秘密基地」が登場する。
写真と文章で紹介される「秘密基地」の数々を、見ているだけで楽しい。
とくに、いくつも登場するツリーハウスの例は、「あー、こういうの欲しい」と本気で思った。
本書を読んで気づいたが、いわゆる「男の隠れ家」願望と「秘密基地」願望は、似て非なるものだ。
「隠れ家」が基本的に1人で過ごす場所であるのに対し、「秘密基地」は基本的に仲間と過ごす場所であるから。
で、私自身がどちらの願望を抱いているかといえば、いまなら「秘密基地」よりも「隠れ家」だな。仲間と遊ぶよりは1人の時間がほしい。……と、そんなことにまで気付かされてしまった(笑)。
後半の第二章「実践編」には、いまから秘密基地を作ろうとする人のための具体的なアドバイスもなされている。
遊び心に満ちた愉しい本である。
- 感想投稿日 : 2018年10月13日
- 読了日 : 2014年5月31日
- 本棚登録日 : 2018年10月13日
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