ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

監督 : ソフィア・コッポラ 
出演 : ビル・マーレイ  スカーレット・ヨハンソン  ジョバンニ・リビシー 
  • 東北新社
3.44
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本棚登録 : 2025
感想 : 353
5

封切り時に観て以来、20年ぶりに再見。もう20年も前の映画であることに驚かされる。

初見のときにはこんな感想をブログに書いていた。
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CM撮影のため来日した大物俳優(ビル・マーレイ)と、写真家の夫の仕事のため来日した若妻(スカーレット・ヨハンソン)。

俳優は身過ぎ世過ぎの仕事に倦んでいる。女は、仕事で飛び回る夫からホテル(新宿のパーク・ハイアット東京)に放置された状態で、寂しくてたまらない。そんな2人が、ホテルのラウンジで出会う。

2人の淡い恋と並行して、彼らが東京の街で出合う出来事がスケッチされていく。ネオン輝く東京の夜景が、こんなに美しく撮られた映画はいままでになかったのではないか。

ともに自分を見失っている状態にある2人が、東京でのささやかな冒険を通して「自分探し」をする物語ともいえる。だが、最後まで「自分」は見つからず、途方に暮れた宙ぶらりんの状態でストーリーは終わる。

カルチャーギャップが随所で笑いを誘う知的なコメディでもある(タイトルは「翻訳の過程で意味やニュアンスが失われてしまうこと」を意味する)。

「出てくる日本人が過度に戯画化された、日本蔑視映画」という評価も目にしたが、私にはその点は気にならなかった。“初めて来日したアメリカ人から見れば、ま、日本人はあれくらい滑稽に映るだろうな”という許容範囲内だと思う。

ただ、淡いスケッチの積み重ねで成り立ったストーリーは起伏に乏しく、映画的な盛り上がりに欠ける。なぜこの作品が「アカデミー・オリジナル脚本賞」なのかと、首をかしげた。
 
ストーリーよりは「気分」を味わい、全体よりはディテールを愉しむべき映画。
 
たとえば音楽好きなら、トリヴィアルな愉しみ方ができる映画だ。
カラオケボックスで、ビル・マーレイはロキシー・ミュージックの名曲「モア・ザン・ディス」を歌い、スカーレット・ヨハンソンはプリテンダーズの「恋のブラス・イン・ポケット」を歌う。

来日中のハリウッド女優役のアンナ・ファリスがホテルのバーで戯れに歌うのは、カーリー・サイモンが歌っていた『007/私を愛したスパイ』の主題歌。 
そして、エンド・クレジットに流れるのは、我らがはっぴいえんどの「風をあつめて」だ。
音楽の使い方はすこぶるセンスがよい。
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今回再見してもおおむね同じ感想を抱いたが、20年前のスカーレット・ヨハンソンの美しさに目を奪われた。

いまや堂々たるハリウッドスターになったスカヨハだが、本作ではまだスター然としておらず、初々しい。
それでいて、ホテルのベッドに横たわっただけでも絵になってしまうほど、圧倒的な原石の輝きがある。

ソフィア・コッポラ監督自身の体験を元にした、半自伝的映画でもあるそうだ(ヒロインは若き日の彼女がモデルで、夫のカメラマンは元夫のスパイク・ジョーンズがモデル)。
だからこそ強い思い入れをもって、スカヨハの美しさをフィルムに刻みつけたのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アメリカ映画
感想投稿日 : 2024年2月18日
読了日 : 2024年2月18日
本棚登録日 : 2024年2月18日

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