重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎 (2012年5月29日発売)
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かつてニュートン力学が物体の運動を記述することに成功し、その後電磁気学が確立したことで、目に見える世界の物理現象はすべて説明しつくしたに見えた。ところが現実にはそうではなく、ニュートン力学と電磁気学の間には齟齬があったし、その後発見された黒体輻射やコンプトン効果など、目に見えないミクロの世界の現象はこれらの理論では完全には説明できなかった。そもそも、ニュートン力学では重力がどのようにはたらくかを説明できても、なぜ重力が生まれるかを説明することはできなかった。そこで、ミクロの現象を記述するための量子力学や素粒子論、そしてミクロの世界だけでなく宇宙そのものの謎と深く関係している重力理論が発展していくことになる。

本書は重力に関係する理論に重点を置いて説明している。重力理論は発展中の理論ということもあり難解ではあるのだが、特殊相対性理論と一般相対性理論、そして超弦理論といった一つ取り上げるだけで教科書が何冊も書ける理論を読みやすく新書一冊にまとめている大栗先生の手腕に感心することしきりだった。また、科学の発展は人間ドラマがつきものなのだが、教科書的な記述ではどうしてもそれが見えてこないのに対し、多くの研究者のエピソードが入れられているので学問の世界も血の通った人間の行いであることが感じられると思う。あまりにも当たり前だけれど考えてみると不思議だらけの重力について、違った一面を感じられる一冊である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サイエンス
感想投稿日 : 2020年12月13日
読了日 : 2020年12月7日
本棚登録日 : 2020年12月2日

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