青春小説というと、いったいどういうイメージが浮かぶだろう。汗と涙の末の勝利。ライバルとの熱い戦いと、仲間の中で起こる喧嘩、そして深まる友情。最後は夕陽に向かって河川敷を颯爽と駆け抜ける姿よろしく、どこまでも広がる若人の未来を暗示するようなモノローグ……
FUCK!そもそもそんな青春97%の人間は送っちゃいないのである。アホで、堕落してるのはわかっちゃいるが、居心地はたまらなく良く、どうしょうもない日常。うだうだと堂々巡りの間に、本気だしてないまま終了な人生。だが、君たちがそんなにダメなのは君のせいじゃぁない。そう、それらの全てはNHKの陰謀なのだ!
てな感じで、どうしょうもない引きこもりの主人公の被害妄想から始まるこのストーリー。出てくる奴らどいつもこいつも自意識過剰なダメ人間ばかりで、まったく救いようがない。それでも、たとえ後ろ向きな自己否定を伴っていても、なんとかやらにゃいかんと必死に奮闘し力尽きていく様は、ギャグタッチで描かれていながらも非常に重いテーマ性を持つ。冒頭あげた青春小説のテンプレートは現実世界の青春を理想方向への引き延ばした姿だが、これも別方向への青春解釈とも言えよう。
ラストの余韻も、前章までの盛り上がりはどこへいったのか、淡々としていて寂しい。けれども、この作品はこれでよいのだ。名作。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ラノベ
- 感想投稿日 : 2010年6月27日
- 読了日 : 2010年6月27日
- 本棚登録日 : 2010年6月27日
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