教養小説と呼ばれるからには、多少のお堅さや説教臭さは甘受しなければいけないのだろうなと想像していたが、全然そんな必要はなかった。因果と偶然からなるあらゆる出来事が折り重なり、話が進むにつれぐんぐん引き込まれる。感服です。一人の人間の修養過程がひたすら描かれるが、それでいてあまり理想の人間像の押し付けになっていないのは、才能の差や偶然といった不可避の要素を否定していないからだろう。「人の幸福は、自分の持っているものを磨くことのうちにのみ見出される」というようなことを言っていたショーペンハウアーがこの本を賞賛するのも納得である。それにしても、意外なほど宗教色がないのには驚いた。また、多様性に対する肯定も感じられる。たぶん現代人が最も抵抗なく読める部類の古典だと思う。
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- 感想投稿日 : 2018年3月21日
- 読了日 : 2018年3月21日
- 本棚登録日 : 2018年3月17日
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