グエムル-漢江の怪物- スタンダード・エディション [DVD]

監督 : ポン・ジュノ 
出演 : ソン・ガンホ  ピョン・ヒョボン  パク・ヘイル  ペ・ドゥナ  コ・アソン  イ・ドンホ  イ・ジェウン 
  • ハピネット・ピクチャーズ (2012年3月10日発売)
3.40
  • (52)
  • (97)
  • (136)
  • (40)
  • (13)
本棚登録 : 603
感想 : 124
5

ただのB級モンスターパニック映画だと思って観たら全然違いました。
表面上はモンスターパニックものなんだけど、
ファミリーコメディと社会風刺、メッセージ性をぶちこんでる。
そりゃ韓国でヒットするよ・・・。

アメリカでもそういう映画はヒットしますよね。
映画が観客の気持ちを代弁してくれてるようなやつ。
日本ってそういう映画があまり無い気がするんです。
(知ってたら教えて欲しい)
なんで日本の映画界ってこうなの?
送り手側の問題?我々受け取り手側の問題?
と、強く思わされました。

で、この映画はモンスターパニックものとしてはそこまで面白くない。
だけど、色んな要素が入ってて、その不協和音がすごくよくて。
たぶん意図的になんだろうけど、全ての部分でセオリー破りを目指してる気がする。
謎がすげえ多いんです。

ここでフォローさせて頂いてる方とちょっと話したのだけど、
モンスターの大きさってほんと重要ですよね。
ゴジラサイズになると、民間人は手が出せない。
軍隊が出てくるので、ジャンルとしては戦争映画やディザスター映画。
『メルド』のように等身大になるとバイオレンス映画。

この『グエムル』サイズで思い出すのは、超名作『トレマーズ』だ!
『トレマーズ』世代なんですよ(笑)。
で、『トレマーズ』は陸上版『ジョーズ』なんだとか。
あとまんま『デューン』のサンドワームの小さい版なんだけど。

このサイズになると、個人が戦えるのです。
ジャンルとしてはガンアクションになる。
『グエムル』は完全に個人・家族目線の内容で、
科学者が出てきてモンスターの出自や生態を説明したりとかがない。
全ては謎のまま。(出自だけははっきりと観客に示唆されてるんだけど)

そして、色々な社会問題もあるんだけども、
それらって我々一市民は、不満があったり「なんでそうなんの?」って思うのだけども、
複雑で膨大に膨れ上がった社会システムって、結局は謎なんですよ。
蛇口をひねれば水は出るし、スイッチを押せばテレビはつくけど、
例えば原発の問題にせよ、この映画でも出てくるけど、イラク戦争のこともそう。
根本的なことはよくわからない。
わからないまま、知らないまま色んなことが起きてる。情報に流される。
そういう怖さを非常に強く感じました。
印象的なのが「誰も俺達の話をちゃんと聴いてくれなかった」っていうね。

『ゴジラ』と対比しても、ABC兵器のAがゴジラで、BとCがグエムル。
震災以降、日本人にとってはAが重要なのだけど、
なぜか身近に感じられない。なんで?
BとCの方がものすごく身近な問題に感じてしまう。
ここんとこは日本の問題なのかもしれません。


CGは途中までは出来が良いのだけど、炎や爆発の描写って難しいんだろうなあ。
『キラー・インサイド・ミー』のラストで興醒めしたのを思い出した。
あれよりは出来いいけど。

そしてやっぱり食事のシーンは最高に良い。
(『エグザイル/絆』も料理~食事シーンは良い)

ラストは監督ははっきり名言しているのだけど、
観客はどちらでも取れるような作りになってます。
ウィルスの件もそうだけど、謎のままで色んな解釈ができる。
あと、「手のひらの○」はポン・ジュノさんのサインなんでしょうか。
グエムル=竹中直人で、『シェイキング東京』は続編なのかな。

モンスターパニック映画としては★3個。
社会風刺的メッセージで★4個。
ぺ・ドゥナの赤ジャージで★100個なので、
平均すると★5個の評価になります。
ポン・ジュノは萌えのツボをよくわかってるなあ。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー・クリーチャー
感想投稿日 : 2013年6月7日
本棚登録日 : 2013年6月7日

みんなの感想をみる

コメント 2件

kwosaさんのコメント
2013/06/08

GMNTさん!

おお、さっそく観てくださったのですね。
ありがとうございます。

そう、これ本当に「トッピング全部のせ」って感じで、いろいろぶちこんであるんですよね。
ポン・ジュノ監督がどのような経緯で『グエムル』を撮ったのかはしりませんが、もしかしたら「怪獣映画」という縛りがあって、そのなかで「日活ロマンポルノ」とか「Vシネ」みたいに監督のカラーが溢れちゃったのかな、と勝手に思ってみたり。
根底に流れているものは同じですものね。
それでもポン・ジュノ作品としては少し異色なので是非他の作品も観てみてください。

そうそう、登場するダメなお父さんは『殺人の追憶』でも主演をしていて、『グエムル』とは全くイメージの違う叩き上げの刑事を好演、熱演していました。
韓国では超人気俳優さんらしいです(その割には名前を覚えていないのですが)。

とにかく韓国の映画は混沌としてはいるのですが熱量が凄い。
理屈ではなくいろいろ伝わってくる物があります。

あ、でもたしかに爆発のところは「がくっ」と腰が砕けたかも。
うろ覚えですが、何となく思い出して笑ってしまいました。

GMNTさんのコメント
2013/06/08

いえいえ~こちらこそありがたいです!
基本的に、薦められた映画は必ず観ることにしてるんですよ。
友人とかでもあまり趣味が合うことがなくて、
10本中3~4本ぐらいしかバッチリってないのですが、
合ったときに「あ、じゃあそれって趣味的じゃなくてほんとに面白いよね」ってなりますし、嬉しいですし。

この映画のときの監督インタビューをちょこちょこ読んだんですが、
「幻だったかもしれないけど、昔実際に漢江で見た」
「監督になったらいつかそれを映画にしたいと思ってた」とか言ってるんですよ。
なんじゃそれ!って(笑)。

『殺人の追憶』も、置き換わっただけでかなり近いと聞いてます。
で、お父さん役はソン・ガンホですね。
『JSA』とか『復讐者に憐れみを』とか、パク・チャヌク作品によく出てるみたいですけど、
『オールドボーイ』しか観たことなくて。
ポン・ジュノもパク・チャヌクも、とりあえずレンタルである分は全部借りて観ようと思ってます~!

炎のシーン、やっぱり純正ハリウッド産に比べたら若干落ちますね(笑)。
あちらでも、そんなにお金かかってない映画だとやっぱり炎とか爆発ってダメなのが多い気がして。
そこらへんが非常にB級くさくて、ある意味「味」になってて、これはこれでよかったですけど(笑)。

ツイートする