恋する西洋美術史 (光文社新書 384)

著者 :
  • 光文社 (2008年12月16日発売)
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本棚登録 : 277
感想 : 28
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いやあ、面白かったです。絵画と西洋文化史とを絶妙につなぐ本作。しかもテーマは恋愛。

読後、絵画の豊潤さに思いを致しました。

・・・
で、陳腐に思ったこと。
「絵画って、歴史を綴るなあ」と。

洞窟で暮らす人々の生活を写すところに始まり、キリスト教の宗教画として機能したり。ルネサンス期にはキリスト教以前のギリシア文化を描いたり、より世俗化したタッチでの聖人画や聖書の題材を描くなどしたり。パトロンの肖像画を描いたり。更には絵画(とそのパトロン)がより一般化したことによりブリューゲルらが農村の風俗を残すようになったり。

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そう、何か知らんけど、妙に感心してしまったのです。

「絵画、深いじゃないか」と。

単なる美醜で見る。これもまた良いでしょう。でも、それだけに留まらないのです!

その作品の中に新たな技術を見出したり、あるいは全体の構図から寓意を見出したり、描きこまれるアイテムから聖人を特定したり。つまり、描きこまれたアイテム一つ一つを繙くと、そこには多くの意味が込められているわけです。ぞくぞくしませんか?

時に人はそれを「うんちく」と言って揶揄します。が、一定数の中高年のおじさんにはこれは蜜の味です。そして実際、端々に潜む意味・意義を教える本作、私には面白く感じました。

で、本作はそういうことを丁寧に教えてくれる作品であった、ということです!

・・・
ということで池上氏の西洋美術史の本でした。

絵の話ではありますが、習俗・風俗の話、作家の話、西洋史(文化史、宗教史、政治史)、ギリシア神話、新約聖書・旧約聖書など、色々な話が分かっていて初めて十全に楽しめる世界だと感じました。

池上氏の解説により、やっとこその一端を垣間見ただけですが、知の蓄積・集積、まさに歴史を感じた一作です。

中高年の歴史好きには激しくお勧めできる作品かと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史・文化
感想投稿日 : 2024年1月21日
読了日 : 2024年1月20日
本棚登録日 : 2024年1月21日

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