色を失う冬に、喪失の季節に、打ちひしがれる時に、読むと決めていた本。
この本を必要とする時期が来て、数行読んで思ったのは、この本を信頼して本当に良かったということ。芯からの寂しさと、髄まで沁みた悲しみを持った人の言葉に出会えたことに、心を打たれた。
理解など要らない、分かってもらわなくていい、気休めなんて煩わしい、どんな慰めも励ましも届かない孤独に、なんて響く文章なのだろう。
「不在」という圧倒的な存在が、「不在」という質量の重みが、「白」というテーマで見事に表現されており、この静謐な筆致に嗚咽が出るほど何度も胸が押しつぶされた。
ハングルで白い色を表す言葉の、「ハヤン」(まっしろな)と「ヒン」(しろい)。綿あめのようにひたすら清潔な白「ハヤン」とは違い、「ヒン」は、生と死の寂しさをこもごもたたえた色だそうだ。
喪失を、不在を、何かでごまかしたり埋めようとは思わない。この白さを、生きる限り、至る所で見つけ、吸い込む。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年3月20日
- 読了日 : 2024年3月20日
- 本棚登録日 : 2024年3月20日
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