ノスタルジーを誘う「おばあちゃん」という響き。しかし大多数の女が年老いた女になるつもりなどないのに避けられない現実。
収録短編のうち最も気に入ったのは「アリアドネーの庭園」だ。主人公の老女の視点から見る、失望に満ちた老後の人生に同情していた読者は、終盤の視点の転換に息を飲む。私はどちらの立場だろうと考えたが、どちらにもなり得るのに、双方の断絶と、横たわる分かり合えなさに茫然。その分かり合えなさを読者に分からせる構成が本当に見事で、目前に迫る現実を突き付けるディストピアSFとしても秀逸な物語。その著者が、希望を抱かせる物語として多くの人に愛される小説「アーモンド」のソン・ウォンピョンだというのに驚かされ、作家の思いがけない世界観を堪能した。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年6月30日
- 読了日 : 2023年6月30日
- 本棚登録日 : 2023年6月30日
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