訂正可能性の哲学 (ゲンロン叢書)

著者 :
  • ゲンロン (2023年9月1日発売)
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感想 : 35
4

2024/5/1
導入部分は理屈っぽさを感じたけれど、その前振りの理由が判ると本論にスムーズに入っていける。
いわば予習と本題の繰り返しを続けながら進む形に慣れていった。
示される過去からの経緯やその関連資料が多く、その内容をきちんと把握できていないからかもしれないが趣旨は非常にシンプルな印象だった。
本書に限らないが右だ左だとか、何々派、何とか主義とかが出てくる度に、その主義主張はこうである、だからこうすべきとか、それは解釈が外れているとかいう事例や批判が伴うが、他人が提唱した理論がいかに優れていると思えても、それを理解し、それに合致した生活や行動を100%行うのは無理であるし、その意味もないように思う。
多くの人々は決して右や左、赤や青、特定の主義主張等、両極端に分かれているわけではなく、その内容や、その時に応じて両極の間を行ったり来たりしている。
社会には公の役割は必要だし、私のない世界などあり得ないのが普通の感覚だろう。
そこには絶対の基準などなく、あるのは公私およびオン・オフの程度の違いだけ。
昔、選挙の前に色んな政治テーマ(確か7つ)について、なにが最適と思うかという問いがあって、答えてみたところ自分の意見と合致する政党が各テーマで全て違っていたという経験がある。
驚いた反面、それが普通なのかなとも納得した覚えがある。
どんなに意思疎通が出来て理解しあえている間柄でも所詮人と人は異なるし、自分自身の事さえも決して全て理解できていない。
ましてや人間の集団や社会全体に共通した真実や善はなく、その近似値を常に想定、追求し続ける事が必要なのだと思う。
その試行錯誤は人間の活動が休止しない限り続くエンドレスなものだと思うし、生物が自らの破壊再構築でエントロピーを排出し続けることによって生命を維持しているのと同じかなと思う。
そういう意味では当然というか、その通りという内容だった。
逆に真実はこれだ、これが究極だと唱える者は、為政者であれ、宗教家であれ、学者であれ、そこには傲慢と腐敗が必ず付きまとうということを改めて自覚すべきと感じた…頂点に達したら後は転げ落ちるだけ。

追記
一般名詞と固有名詞についてはなかなか面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 思想・哲学
感想投稿日 : 2024年5月2日
読了日 : 2024年5月1日
本棚登録日 : 2024年5月2日

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