じわっと涙が溢れ、クスクスと可笑しさが込み上げ、なんだか心の栄養になるような物語だった。カバーのそでにはかたばみについての簡単な説明や花言葉が掲載されている。読み終えてから改めて見ると、なんとも素敵なタイトルだと沁みてくる。
主な舞台は戦中から戦後。その日の食卓や一日の暮らしが詳細に描かれる場面も多く、当時の環境や空気がありありと目に浮かぶようだ。戦中は、空襲での被害や常に脅かされる日常の心情が。戦後は、大きな変化と長らく戸惑うことになる日常の心情が。家族として暮らすことを通してまっすぐに伝わってくる。理不尽で辛いことが多いが、社会の変化に対しても人に対してもしっかりと向き合って生きている姿にジンとくる。
「終戦から七年も経つと、被害に遭わなかった者は簡単にこれを過去にできる。だが一方で、大きな傷を負った者は生涯戦争を背負っていくことになる。」文中にこのようなくだりがあるのだが、直接的な被害も間接的な被害も想起される。皆がそれぞれに何かしら抱えて、葛藤したり衝突したりしながら前向きに生きていく姿がとても印象的だ。どの人物も人間味があって魅力的で、家族であってもなくても人と人の繋がりにとても心温まる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年1月20日
- 読了日 : 2024年1月20日
- 本棚登録日 : 2024年1月20日
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