猫間地獄のわらべ歌 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2012年7月13日発売)
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本棚登録 : 256
感想 : 45
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今回は帯の勝利です。「お江戸で密室」「館ものに見たて殺人」って、何それ…買うしかないじゃん…。
時代小説は正直、食指が全く動かないジャンルの一つなんですが、「ミステリ時代小説」というエンタメ感丸出しの今作はさくさく読めました(*^^*)意外と取っ付きやすいなと思ったけど、普通の時代小説はこうはいかないのかしら…。

何と言っても、物語の随所に差し挟まれるメタ展開が面白い(笑)。「左様か」とか「しからば」とかしかつめらしい顔で話してたちょんまげ侍達が、「密室とか言っちゃっていいんすか?」「こーゆーメタ展開、読者はうるさくないすか?」っていきなりメタ談議始めるのが面白い(笑)。ミステリファンには好みが分かれるお馴染みの仕掛けですが、時代小説ファンには「突然何やってんのこいつら?」な戸惑いを与えること間違いありません(笑)。

キャラ達がふざけたり歌ったりしながら物語の真相に徐々に肉薄していくのですが、ここまで「見たて殺人」と「首切断」がピッタリ嵌るミステリはなかなか無いのではないでしょうか。斬首や切腹が刑罰として残る時代の中で発見される首なし死体は、薄気味悪くも違和感なく探偵役達の前に現れます。そして、そこでも繰り返されるメタ談義!(笑)うーん、楽しい(笑)。

「お偉い皆様を集めてさてと言い」をする前に挟まれる読者への挑戦状も、作者の茶目っ気たっぷりで、終始面白おかしく書いてるなこいつ…と思わせておいて、最後にし掛けられた思わぬトリックに、ミステリファンは「ぎゃふん」と言わされることと思います。
あと、時代小説ファンの皆さん。今作に仕掛けられた最大のトリックを、皆さんなら冒頭から見抜いてしまわれるかもしれません(そうでなくとも違和感は感じられるのかも)。




藩主の妾が住む屋敷の蔵で、藩士が腹を切って自死した。誰がどう見ても「自殺」にしか見えない密室という状況下だったが、スキャンダルを恐れた妾によって「他殺でっち上げ」を依頼された俺は、頼りない目付の男と「真相捏造」に乗り出すが…。
一方、国元では不気味なわらべ歌になぞらえて次々と殺人事件が発生していた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ●推理小説(国内)
感想投稿日 : 2012年9月16日
読了日 : 2012年9月15日
本棚登録日 : 2012年9月15日

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