『グレイヴディッガー』中世暗黒の時代、魔女狩りの名目で、無実の人々が拷問死させられた。それを取り仕切っていた異端審問官が相次いで暗殺される事件が勃発。それは殺された魔女(男性も異端とみなされれば魔女扱い)の復讐であった。魔女が、あの世から蘇り復讐する。その魔女はグレイヴディッガー(墓掘人)と呼ばれた。
こういうとんでもない伝説……大好きぃ!!もっと下さい!!
『13階段』で司法の闇を描いた高野さんの2作目。こちらの方がより好みそうだと思っていたら、予想以上に大好物でした。
早速にこの伝説について調べてみた所、なんと高野さんの創作との事。映像畑の方はエンタメを作る能力に長けていらっしゃるなあ。
あまりにも好きな設定だったので冒頭に書きましたが実際は13階段に負けず劣らずの、今度は政界と国家権力の闇の渦。
物語は殺害された麻薬中毒患者の死体が消えた事件から始まります。
それを皮切りに儀式めいた遺体がごろごろと量産されて行き、犯罪歴のある八神が一連の連続殺人犯と疑われ警察から追われる羽目に。
ところが八神は白血病患者にドナー提供が決まっていた為に指定の時間までにどうしても病院へ行かなくてはならない。
ここから物凄い逃走劇がスタート。凄すぎて笑ってしまいます。『絶対×絶命』という脱獄した骨髄移植者になる知能犯を追いかける洋画がありますがこれの真逆ですね。
東京都足立区から大田区までの区間を警察と謎の組織、更にはラスボス感満載のグレイヴディッガーから追いかけられる八神。あまりの前向きさとバイタリティに八神応援団となってエールを送ってしまいます。
東京都にお住まいの方は更に楽しめるんでしょうね。
待ちに待ったグレイヴディッガーの登場には世の中の少年心を忘れない方々には堪らないんじゃないでしょうか。
かっこよすぎるだろ!!!
終盤の階段下から登場するシーンなんて映像が脳内再生されて、とりあえず彼になら弓で射抜かれても良いかなって思ってしまう!最近、問題発言が多い気もしますが今年のハロウィンはグレイヴディッガーの仮装をしたい(誰にも分かって貰えない事請け合いです。)
ダークヒーローものと言っても良いようなホラーサスペンスですが、かなり重たいテーマを扱っているのにも関わらず爽やかなエンタメに仕上がっているんですよね。前作の13階段でも思ったのですが、登場人物同士のやり取りが本当に気持ち良く、魅力的なキャラが多いのでそう思わせてくれるのでしょうか。
政界の闇が、八割は高野さんの創作である事を願うばかりです…。絵に書いたような悪い人が出てくるのでそう信じたいのですが…。
加速する逃走劇の裏ではどんどんと謎が謎を呼び警察、公安入り乱れの大騒ぎとなった末に全てが見事に収束していくのですが、こちらも真相を読者に委ねる所があります。ですがそれがむしろ爽快感を増してくれていて私はあれ以上ない終わりだと思います。
警察こんなに無能でした…?とかSAT弱すぎませんか…?とか、突っ込みたくなる所もあるには有りますが、だって仕方ないんです!
八神のポジティブパワーが強すぎだし、グレイヴディッガー様がかっこよすぎるんです!!(最早、教祖扱い)
このように、こまけぇ事は良いんだよ、と思わせてくれる程にエンタメとして疾走感たっぷりに読ませてくれるので、読む映画として楽しみたい方にはお勧めです。
本当は内容の性質上からある程度は一気読みしたかったのですが、忙しくなってしまい本を持ちながら寝落ち、また夜読んで寝落ちを繰り返してしまい毎日墓掘人の事が頭から離れませんでしたので、もし今からグレイヴディッガー教に入信されるご予定の方は、お時間のある時にどうぞ。
- 感想投稿日 : 2023年10月27日
- 読了日 : 2023年10月30日
- 本棚登録日 : 2023年10月26日
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