彷徨える艦隊 7 (ハヤカワ文庫 SF キ 6-7)

  • 早川書房 (2012年1月25日発売)
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感想 : 11
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伝説の英雄ジョン・ギアリー提督が100年の冷凍睡眠からよみがえり、壊滅寸前の艦隊を危機から救い出して、長い戦争を終結させた、前シリーズ(1~6巻)の待望の続編第1巻目。

物語として大きな魅力があるのはもちろんで、読者がそれぞれの楽しみを味わえばよいと思う。
本書の特異点は、すぐれたマネジメントの実践書である点である。

すぐれたトップマネジメントであるギアリーは、前シリーズにおいて、堕落していた艦隊を建て直すことに成功した。
艦隊が堕落したのは、艦隊のマネジメントに民主政治の論理を持ち込んだからである。艦隊のマネジメントには軍隊の論理が必要であり、ギアリーは、結局、艦隊から民主政治の論理をのぞき、軍隊の論理を注入することにより、立て直しに成功したのである。
さて、新シリーズにおいても、ギアリーのトップマネジメントとしての優秀さは際立つ。というのは、政治家らとの交流においては、軍隊の論理ではなく、民主政治の論理にもとづいて行動するのだ。そして、この点は、彼の優秀さを示す一端にすぎない。
本シリーズにおいて、彼は異星人世界への遠征を命じられるのだが、彼はやはり一貫して、異星人との交流においては、異星人のもつ論理を探求しようとするのである。
トップマネジメントに求められるのは、組織を強力にすることではない。組織の使命や性質に応じた最適な運営を実行することこそ、トップマネジメントの使命である。
今後のギアリーの探求が興味深い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年4月3日
読了日 : 2012年4月2日
本棚登録日 : 2012年4月3日

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