魔女の宅急便 2キキと新しい魔法 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店 (2013年5月25日発売)
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キキの宅急便屋さん、2年目のお話。

さまざまな仕事を通じて、いろいろな人と出会うキキ。「物といっしょに、人のよろこびややさしさを届けたい」と思っていた彼女ですが、黒い手紙を届けるよう依頼されたことをきっかけに、「知らないうちに悪いものを運んでいたかもしれない」と思い悩むようになります。キキにとって、自分の仕事をみつめ、自分自身をもみつめる大切な出来事であるように思いました。

そんなキキへ、お母さんのコキリさんから届いた手紙の一節がとても印象的でした。

「どれがいい心から出たものか、どれがわるい心から出たものか、なかなかわからないと思うの。かあさんは、だれにも、それを決める力はないと思うわ」

誰かにとっては素晴らしいと感じる物事が、誰かにとっては劣悪だと感じられることは多々あります。何が善で、何が悪かなど、一刀両断で決めることなんてできない。じゃあ、どうすればいいのか―。

結局のところ、自分自身の価値観や信念を通じて、世界と交わり合っていくしかありません。そんな中で、ひとりよがりにならず、相手を思い遣り、受け止めながら生きていくことができるかどうか。14歳のキキは、きっとそんなことを学び始めたところなんじゃないかなと思いました。同時に、私自身も今一度、大切なものに気づかされた気がします。

作品自体は児童文学的な趣が強いですが、作品にこめられたメッセージは大人が読んでもハッとさせられることばかり。名作たるゆえんは、こんなところにあるんでしょうね。第3巻の発売が今から楽しみです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 角野栄子
感想投稿日 : 2013年6月21日
読了日 : 2013年6月18日
本棚登録日 : 2013年6月21日

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