(ややネタばれあり?)
話の粗筋は、数年前にコミックを読んでいたので知っていた。しかしながら、活字での読み応えはすさまじいものがある。
それぞれの登場人物の抱えるものと、それぞれの武装。社会的には最も重い罪を犯した者が、実は最も単純明快。それは自らの在りようの落としどころを外の世界に求めるか、自身の内側に向けてゆくかという分岐の末にある「取り返し」の可否であり、あるいは、男女の違いであるかもしれない。
桐野作品においては、たびたび、性差というものが重要なファクタとして存在する(という印象を持っている)。
殺人犯の少年というアイコンを取り巻く、罪のない好奇心や自尊心が物語をうごかす。その過程で、浮き彫りになってゆくもの。浮き彫り、という表現では生温いほどに、まさにえぐり出すといっていい。
一方、アイコンは最後まで鉄のようにゆるぎなくアイコンなのである。この対比もあざやかな印象を残す。
白昼夢のような逃避行、それに絡む人間たち。罪を打ち遣り、是非すらも問うことなくただただ突き詰めた先に、自分の身をもって引き受けたもの、それだけが『リアルワールド』へと導く。
逡巡の末に、それぞれが見出すリアルワールドとは。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2012年8月17日
- 読了日 : 2012年8月17日
- 本棚登録日 : 2012年8月17日
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