定年オヤジ改造計画 (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社 (2020年9月11日発売)
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感想 : 151
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あっという間に読み終わった。
世の家庭を持つ女性陣の気持ちがミステリーっぽく、時にサスペンス?も感じさせつつ、コミカルな要素も取り入れて世の男性陣に迫ってくる様子がリアル過ぎて凄い。

戦後働き詰めで長時間労働を強いられた男性陣
一方で家庭の一切合切を担う事になった女性陣
そして時は流れ高度経済成長の中、男女雇用機会均等法の名の下で女性活躍社会が招いた少子化社会の顛末が、どの家庭にも身近に差し迫った問題として訴えかけてくる。

日本社会?政府?のせいにする気は毛頭ないが、情報過多社会の現代だからこそ、何が正しくてどう進んだらいいのか、競争化社会や家事育児の毎日に翻弄されている中でもしっかり見極めなくてはならない時期に来ているなぁと心底感じた。

それにしても、常雄が語る神話。
三つ子の魂百までとか、
母性は生まれつき備わっているとか・・・
そう!お父さんは古いのではない。
これらは全て神話なのだ。
私も感覚が神話に洗脳?汚染?されている部分が時々あるので、結婚する気のない百合絵の言葉には度々ドキッとした。

作中に出て来る台湾から来た玲玲のお父さんの話も印象的だった。
台湾と日本を比較しただけでこうも違うのか・・・
日本人の働き過ぎと男尊女卑の風潮は、日本が世界から遅れをとっている大きな一因なんだろうと思う。

隣の芝生は青い・・・のように大きなスケールで諸外国との違いを考える以前に、そもそも自分が築いた家庭の内情に無知過ぎると、常雄さんのように大企業の鎧が無くなった後、本当に家族からも世間から取り残されるだろう。でもなぁ、そんな働き詰めのお父さんも被害者だよなぁ。
24時間働けますか!?とか堂々とCMしていた時代の言わば企業戦士だもんなぁ。
なんだか切なくなってしまった。

垣谷美雨さんの凄いのは、これを社会が招いた悲劇で終わらせず、長寿社会で定年後生きる術を手探りで模索し、同じ悲劇を後世に引き継がせないように働きかけるという希望を見出してくれている所だと思う。
そして女心と男心の心情対比が実に見事に描かれている。これは身近にリアルなモデルでも居るんだろうか・・・
世の女性陣の悲痛な胸の内をよくぞここまで代弁してくださった。その事に心から感謝したい。

女が黙った時は危険信号!!
これは本当その通りだと思う笑
家庭を持つ全ての方へ是非オススメしたい一冊

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年1月25日
読了日 : 2024年1月25日
本棚登録日 : 2024年1月6日

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