姑の遺品整理は、迷惑です (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社 (2022年4月14日発売)
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本棚登録 : 1917
感想 : 174
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「遺品整理」
大変だろうなぁ。
まぁでも自分には縁遠い話だろう・・・
いやいや、本当にそうだろうか?

戦後の大量生産大量消費の文化が身に付いて久しい現代人が、程度の違いはあっても必ず直面する問題と言っても過言ではない。「遺品整理」もそうだが、そこに「実家じまい」が絡んでくると、事の大きさが漠然と迫って来る。
あぁ、想像しただけで鳥肌が・・・

本作は、急逝した義母 多喜の遺品整理にひとりで奮闘する望登子が主人公の物語。
竹を割ったような性格で、喜怒哀楽が激しい多喜の終の棲家となった3Kの団地は、余りに多くの物で溢れ返っている。
一方、多喜の比較に毎回出てくる望登子の実母は、常に自らを律して自他共に厳しく、生前に遺品整理をして亡くなった。
果たしてどちらがいいのだろう。
義母に悪態をつきながら遺品整理をしている内に、望登子は自分の知らなかった生前の義母の生き様を知ることとなる。そして、そんな義母だからこそ成し遂げられる遺品整理をするのだった。

実家じまいも他人事ではない。
私も高校卒業後は実家を出た身だが、老朽化した実家のことは年々気になっている。事情は人それぞれだが、とりわけ田舎の旧家であれば同じ思いを抱いている人も多いだろう。生まれ育った家が無くなるというのは、自分の起源が欠けるような感覚にも似ているが、今の時代決して有り得ないことではないのだ。

遺品整理も然りだ。
私も引越す度に物が増えて来た。断捨離ブームの昨今、気まぐれにフリマ出品もしているが、本腰入れてやらなくては!
そして買うなら捨てよう。
捨てられないなら買わない。
遺された者のためにも、そして自分のためにも。

本作は、垣谷美雨さんお得意の「身近なんだけど結構深刻なテーマ」で、人生の後始末の真髄をついており人生の振り返りを促されているようだった。でもそこは流石の垣谷美雨さん。時にユーモアたっぷりに描かれるので、とても読み易くスイスイ読み終えてしまった。特に猫ババアと、パーリー(=パーティ)には爆笑だった。

そろそろ人生の折り返し地点を過ぎたかな?と感じている方には特にお勧めしたい作品。
経験はそう簡単に出来るものではないが、予備知識や考え方だけでも沢山の学びが得られる内容だった。

余談だが「捨てる」じゃなくて含みを持たせた「処分する」で言い換える。処分はリサイクルやオークションやバザーや寄付を連想させるのだという。私は「引退する」とか「卒業する」とか使っていたけど「処分する」も加えておこう!
やっぱり日本語って奥深くて素敵だ♪

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月20日
読了日 : 2023年12月20日
本棚登録日 : 2023年12月7日

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