俺の後輩がこんなに可愛いわけがない (4) (電撃コミックス)

制作 : 伏見つかさ  かんざきひろ 
  • KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2014年1月27日発売)
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感想 : 3
4

黒猫視点でのスピンオフ、コミカライズ第4巻。

絵柄とか、描き文字とか、背景のディテールとか、これまで気になっていたことはほぼ解消しました。短期間での画力向上はすばらしいと思います。ただ、同じポーズ、同じ表情の黒猫が目立つようになりました。具体的には4~6巻の表紙のようなやや斜め上向きで首を少し傾げているポーズで、普通のちょっときょとんとした感じの日常的な表情です。
コピペして使いまわしているのではなく、おそらく一番得意で描きやすいのではないかと思うのですが、バリエーションが欲しいところです。

この巻では黒猫桐乃それぞれの、友情と京介への恋愛感情の間で揺れる気持ちが読みどころ。中でも、ゴスロリ以外の私服を見たいと京介に言われて、「…私も…… あなたみたいな可愛い服を着てみたいから …教えて頂戴……… …お願い……」と手を震わせながら友人に頼む黒猫と、誰に見せるつもりか気付き小さく舌打ちしつつも、友人の頼みを「まっかせなさい」と引き受ける桐乃のやり取り(その後、その白のワンピースを纏った友人がいつになく素直に「ありがとう」と言うところで、おそらくモチーフになったエロゲのヒロインと重ね合わせて「きゅん♧」とするところまでを含めてw)は感情の機微を上手に作画に取り込んでいて、小説でもなくアニメでもなく、静止画でキャラクターの表情を描くことができるコミックならではだと感じました。
ちなみに、この時相反する感情の板ばさみになった二人は、黒猫は下を向きスマホを握る手は震え、いったんは小さく舌打ちした桐乃はすぐに割り切って胸を張り、友人を励まします。描きこまれたこのシーンは、2人の対照的な性格が浮き彫りになっている一方で、この後ある人(桐乃とはっきり書かれているわけではありませんが間違いありません)を見習って思い切り欲張りになろうと決めた(友人と彼氏の両方を諦めず手に入れようとする、って書いてしまうと安っぽいのですが、そういうことでしょう)黒猫と、京介しか信じない嘘をついて彼氏としての京介を諦めようとする桐乃の、それぞれがとる行動はお互いの性格から予想されるのと正反対のものであることが一層強調されます。
そして桐乃の予想外の行動に、席を立った一人での帰り道、「……私……どうしたら――…」と落ち込む黒猫の表情も、やはりコミックならではです。こんな表情をしたあとだからこその「デスティニーレコード」だと思うのです。

一方の桐乃は、やはり悩んだ末に、苛立ちをあろうことか全て京介にぶつけ、通報されてもおかしくないほどの暴力をふるい、何の咎もない御鏡にまで迷惑をかけます。本当は悩み、いったんは黒猫との友情を選んだ末のいじらしい行動であるはずなのに、身勝手さばかりが鼻についてしまいます。この強烈な存在感は、黒猫にとっても、京介への一世一代の告白のはずの台詞が「好きよ…… あなたの妹があなたのことを好きな気持ちに負けないくらい」とどうしても桐乃を意識せざるを得ないほどで、この巨大な存在感でヒロインとしては損してるかな、ってちょっと気の毒ではあります。

ちなみに、「友情」の面では2人とも大きな進展が見られます。
黒猫は桐乃に服の見立てを頼み、何の衒いもなく「恥を忍んで服の見立てを頼んだ【友達】にエロゲヒロインの格好をさせたの?」と2人の関係を【友達】と口に出して規定します(黒猫は瀬菜にも「五更さんに私以外の友達がいるなんてっ」と友達認定されています。よかったね)。桐乃もまた、かつてあやせの前で「知らない人」と言い放ったのと同じシチュエーションで、御鏡に対し、黒猫と沙織を「友達でオタク仲間」と紹介しています。2人ともずっとこんなふうに素直でいられたらいいのにと思わされてしまいました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 俺の妹がこんなに可愛いわけがない
感想投稿日 : 2018年7月20日
読了日 : 2018年7月20日
本棚登録日 : 2016年3月24日

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