コウノドリ(3) (モーニング KC)

著者 :
  • 講談社 (2013年12月20日発売)
4.23
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感想 : 46
5

産科を舞台に妊娠出産にまつわるドラマを圧倒的なリアリティを持って描く人気シリーズの第3巻。
「喫煙妊婦<後編>」「海外出産」「自然出産と帝王切開」「救急救命<前編>」の4編が掲載されています。

この巻では、いろいろな点でサクラ先生と対照的で、でも情熱はサクラ先生には負けない四宮先生の過去が明かされます。何て言うか、サクラ先生は理想で、あんな先生が担当だったら安心だろうなと思う一方で、四宮先生には共感できるのです…自分が同じ立場だったら、四宮先生みたいに振舞ってしまうんじゃないかなあ、って。あと、主要な登場人物の中で四宮先生が一番ドラマの影響が強くて、どうしても星野源で再生されてしまいます。

さらに「救急救命<前編>」から麻酔医の船越先生と救命の加瀬先生が登場します。特に加瀬先生が加わって、ストーリーに大きく幅が出ました。

内容的にはこれまでどおり、綿密な取材と、取材元の豊富な経験談、そして作者の育児経験も反映されているのでしょうか、圧倒的なリアリティは「救急救命」編に至って凄みを増します。「10分後に交通外傷が来る」「妊婦だってよ」「一緒に来てくんねーか?」の重苦しい緊迫感なんか、医療モノの華でしょう。

取り上げられているテーマの中では「自然出産と帝王切開」の中、特に助産婦さんについてはいろいろ言いたいことがあります。

自然分娩や母乳育児を上に、帝王切開や粉ミルクを下に見る傾向は、スピリチュアルなものや似非科学と結びつきやすく、さらにそれが助産婦さんの口から語られると結構なストレスです。
いや、そうじゃない人も多いのかもしれませんけれど、自分たちはそんな言葉に無駄に消耗させられました。

妊娠出産は、本作で何度も繰り返されているようにうまくいくことが奇跡です。ですから、人事を尽くした上で天命を待つのは人として当然の想いです(戌の日の安産祈願や出産後のお宮参り、ウチも行きました)。でもそこにスピリチュアルなものや似非科学を、立場を利用して持ち込んでくる助産師は本当に性質が悪いと思うのです。


以下、各編に一言ずつ。

「喫煙妊婦<後編>」
早剥(常位胎盤早期剥離)で大量出血を起こした妊婦に、過去に救えなかった患者を思い出した四宮先生に対し、「この患者は5年前の患者じゃないよ」と声をかけるサクラ先生。四宮先生を過去の呪い、トラウマから解き放つ一言でした。
クールな言動は崩さないものの、自分の心の傷の象徴、植物状態の子供の病床横でポツリともらす「……今日先生ね チョットいいことがあったんだ」に、思わず「よかったねえ」と一人つぶやいてしまいました。

今回は幸運でした。まさに「出産は病気じゃないから 皆安全だと思い込んでるけど」「ぼくらは毎日 奇蹟のすぐそばにいるから」なので、その奇蹟の可能性を少しでも高めるためにやっぱりタバコはやめましょう。もちろん夫婦で。

「海外出産」
産科の日常を交えつつ、お父さんの役割や安定期の旅行について啓発する内容です。
ウチは海外じゃなくて温泉行きました。そう言えば温泉の禁忌症から妊娠が外れたんでしたっけ。

「自然出産と帝王切開」
助産院のホクロ院長、「私も帝王切開で赤ちゃんを産んだのよ 2人ね」の一言で呪縛を解いてしまいました。
でも、だからと言って耳障りのいい言葉で妊娠中のお母さんを煽ったことはチャラにならないと思うのです。帝王切開=悪を信じ込んでしまった「自然派志向」の本人は仕方がありませんが、お父さんや何よりも生まれてくる赤ちゃんに迷惑です。

「救急救命<前編>」
妊婦検診の帰路。スマホでお父さんと話しながら交差点に差し掛かったお母さん。「気をつけて帰るんだよ」に「わかった……」の台詞の背後に横転しながらこちらに突っ込んでくる車。
緊迫の医療ドラマは、重大な決断を求められたお父さんにフォーカスして次巻に続きます。

巻末にある次巻予告がなかなか新鮮w。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 鈴ノ木ユウ
感想投稿日 : 2019年7月8日
読了日 : 2019年7月8日
本棚登録日 : 2019年6月6日

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