松本清張と言えば、誰もが知っているビッグネームだが、文庫で入手できるものに限ってもあまりに多い著作と、現代ではやや硬めの文体から、ちょっと手を出しにくい存在になっているように思います。
そんな、「松本清張」って名前は知っているけれど読んだことがない、関心はあるけれど手は出しにくい、って人に、「宮部みゆき」という超流行作家の「責任編集」って冠をつけることで手を出させようという見え見えの意図で編まれた短編集で、自分もそんなあざとさに苦笑しながらも作品の内容が変わるわけではなし、と買ってきて読んでしまいました。
松本清張については、「点と線」などの有名作品をちょっと読んだだけで、芥川賞受賞作家だったとか、小倉に記念館があるだとか、平成4年没だとか、そんなことは選者の宮部みゆきさんの、気楽なエッセイ風の「前口上」で知りました。書き出しが「没後十二年」ってなってますが、今年は没後二十年になるんですね。
読後感は…どうでしょう、選者の宮部みゆきさんの中の一定のテーマに沿って作品が収録されているわけで、これを前口上とともに楽しめばいいのですが、自分はその前に、「時代」が気になってしまいました。
作品が書かれた時代、その世相を反映した登場人物の振る舞いです。登場人物は今では考えられないほどいろいろなところでよく煙草を喫み、世間体や名誉を気にします。まさに「昭和」が濃く反映されているわけです。長編だったら、いったん物語の世界に浸ってしまえば、こんなことはそのまますんなり読めてしまいますが、短編で、しかも合間合間に現代風の軽い語り口で書かれた「前口上」を読みながらの現代と昭和との行ったり来たりでは、なかなかそのあたりが難しく、いちいち、そういう時代の作品なんだから、と自分に言い聞かせながら読む必要があり、ちょっと歯痒い思いをしました。
でも、これをきっかけに、この巨人の作品を、少しずつでも読んでみようか、という気にさせてもらいました。
- 感想投稿日 : 2013年2月9日
- 読了日 : 2013年2月9日
- 本棚登録日 : 2013年2月9日
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