とあるホストへ一千万超を貢ぎながら自分の心の奥を見つめていた中村うさぎが、
自分の心の有様を赤裸々に描いたエッセイ。
一般的な目で眺めれば、彼女がどのように言おうとも、
15も下の「春樹」という名のホストへ彼女が「ハマった」その姿を覗き見ているようなものだろう。
しかし私は、この本のそこかしこに溢れている、
「私は『私』を欲している」という彼女の悲痛な声にフォーカスしてしまう。
実際、言い訳ではないのだ、と似たような道を歩んだ私はひとりごちる。
勿論私はホストに貢ぐという形ではなかったし、買い物依存症にもなりはしなかった。
それでもこの本を読んでいると、
まるで暗がりの中に光る小さな鏡の中に映った、
もうひとりの自分を、
うっかりと見つけてしまったようなそんな気分になった。
「それは私の「他者」探しだったのです」
そう綴る彼女の言葉は、
まるで荒野をからからと乾いた草が転がるような、
もはや寂寥という言葉ですらないほどに乾いた裂け目のようだ。
この裂け目から私は這い出し、もう随分と旅をしたのだ。
光る眼をして暗がりを覗きこむ私は、今は遠い空を見つめている。
この本に限っては、あとがきはやはり最後に読むのをお勧めする。
そして本編とあとがきの間に流れた時間が、奔流となって溢れてくるのをどう感じるのかは、また、読む人それぞれの心の有様を浮き彫りにするだろう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2011年6月7日
- 読了日 : 2011年6月7日
- 本棚登録日 : 2011年6月6日
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