「日本の経営」を創る: 社員を熱くする戦略と組織

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2008年11月1日発売)
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■これは最近、何度も何度も読み返している三枝匡さんの近著。



■人材育成のプロセスと経営マインドに関しての関心が

 最近高くなっていることが本書に向かう原動力になっている。




○プランニングというのは抽象・論理・仮説の世界ですよね。それによって組み立てたことを現場で実行してみて、いまくいったとかダメだったとかで、また抽象・論理・仮説の世界に戻る。理屈だけならコンサルタントの世界だし、理屈なしで経験主義だけならただの職人。

 経営者人材が育つプロセスというのは、理屈で考えた、そこから導いた仮説を現場で実際にやってみた、ダメだった、また理屈で考えた、それでもダメだった、もう一度理屈で考えた、今度はうまくいった、そんな行ったり来たりの中で、因果律データベースを豊かにしていくのだと思います。要するに、経営力を上げていくというのは、試行錯誤の回数だと思います。(P100)



■自分だけの「ビジネス・スキーマ集」をつくる…に通じている

 さて、読書と業務を行ったり来たりしながら、何年も仕事をしていくと不思議とコツが見えてきます。読書から得た知(=スキーマ)を現場に変換して工夫を凝らしながら、使えるものと使えないものを確かめて、自分に合ったやり方を探っているのが多くのビジネスマンの実態でしょう。

 ビジネスにおける読書とは、他人のスキーマを買うようなものです。逆に言えば、自分のビジネスに参考になるスキーマがたくさん欲しいから読書をしているのでしょう。しかし、重要なのは、このスキーマをアレンジして自分の仕事にフィットさせることの方ではないでしょうか。読んだらそれがそのまま当てはまるような、単純な仕事はこの世には存在しません。だからこそ「変換」という作業が大事で、その結果、本当に自分の血肉となった法則や因果律がある人が本当にビジネスを動かしていくのだと思います。

 わたしに読書の喜びを教えてくれた阿部謹也さんは「わかる」ことと「知る」ことの違いを明確に指摘されています。「わかるということは知ること以上に自分の人格変容に関わる何かなのであって、それはひとつの事件である」と。つまり、わかるということは、知ることで得た知識を自分流に変換でき、その結果、態度変容にまで行き着くことなんです。読書というのは知る作業でしかない。ですから、いくらたくさん知識があったとしてもそれだけでは駄目で、「スキーマを変形させた自分だけのスキーマ」を獲得することが重要なのです。

 そこでわたしがやっているのは、「自分だけのビジネス・スキーマ集」を忘れないように貯めていることです。梅田望夫さんが『ウェブ時代の5つの定理』で示されたような偉大なビジョナリーの名言は、その言霊が偉大で吸引力が凄いものばかりですが、あれをもっと身近な読書からたくさん収集すること。そして業務で実践し、実験しながら、それを自分の言葉で持って一歩進めること。自分向けに言葉や法則をアレンジして、自分スキーマを貯金していくことが、「思考のホーム・グランド」を形成するコツなのです。

(『READING HACKS!』P149~抜粋)



■現場を動かす力学=(ストーリーによる熱き心の刺激)+(信頼による納得性)

 *特に中間管理職は両方がないと通用しにくい

 信頼による納得性=権威性/共生感(かなり政治的)



○私はこれまで、企業の外から乗り込んで事業再生に取り組むことを繰り返ししてきました。西郷隆盛に部下が黙ってついていくような信頼関係はもともとないところに乗り込んでいくのですから、頼るのは明快な論理しかなかったと思います。もしかすると私に対する信頼感は、この人は一体誰なんだと疑われている分だけむしろマイナス値の状態から始まっており、私はハンディをカバーして余りある強力な戦略ストーリーを立て、その論理性で勝負することを迫られたというのが正しい構図だったような気がします。

 論理に頼らず信頼によって相手の熱さを引き出す手法というのは、誰もが黙って言うことを聞くくらいの何らかの「権威性」があるとか、ある期間同じ釜の飯を食ったというような「共生感」のようなものがベースにあるのではないでしょうか。

 今のミスミにおける社長としての私とその部下は長期の関係ですから、その昔、私が再生企業に1人で乗り込んで行って改革をやろうとしたときに比べれば、いちいち論理的に説明しなくても「信頼による納得性」で話が通る度合いは強いですね。(P222-223)

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感想投稿日 : 2010年3月14日
本棚登録日 : 2010年3月14日

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