飛躍的な発展を遂げたデジタル映像技術は、すでに夢のような世界を楽々と造り出していましたが、この作品は「夢みたいな映像」を生かしきった、という点で空前のモノではないか、と感じます。
脚本に詰め込まれたアイデアが豊富であり、しかも効果的に生かされている。
具体的にはトーテムとか、音楽の使い方とか、多重構造を納得させた上で伏線で走るスリルとかですね。
どんなきわどい場面でも、現代の刺激になれた観客は、すぐに退屈するので、スリリングなストーリーを伏線で流したい、というは、映画を造る人なら考えることなんだろうけど、この作品は「夢の中の夢」のそのまた中の夢、なんて設定を造り出して、成功させました。
時間軸も割り振ったし、異常な状況のオモシロさも腑に落ちるってことだし、凄かったです。
映像の方も、全編、魅力あるシーンばかりで、どこにも一切の手抜きがない。
幻想美を見せるシーンではとことこん出し惜しみなし、だったし、センスも抜群。シーンによっては、廃墟の画家、クノップフすら思いださせてくれた。
その中で、お金の掛りそうな俳優や女優たちが、極上の演技を繰り広げている。
状況の多様性だけでなく、時間軸が閉じて行く、という点でも成功している。
この辺はまさにボルヘスの「円環の廃墟」の視覚化だよ。
正直、クリストファー・ノーラン監督は、「ダークナイト」に世評ほど感動せずイマイチ?の印象だったんですが、この作品にはまいりました。
最後の最後のカットまで計算されつくした幕切れ。
VFXの興隆は、具体的には何を生みだしたの、と後年聞かれたとしても、この1本を差し出せば、納得してもらえるんじゃないかな。
大枚がはたかれた映画だけど、それ以上に、素晴らしいフィクションを創造するんだ、という執念を持ち続け、ひたすら考え抜いたであろうノーラン監督に乾杯!
感動をありがとう。
- 感想投稿日 : 2011年9月18日
- 読了日 : 2011年9月18日
- 本棚登録日 : 2011年9月18日
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