「私の其の後の作品は(エッセイ類も合わして)みんな最初の『一千一秒物語』の註である」とのことだが、確かに通しで読んでみると表題作以外の作品にも、その根底に『一千一秒物語』が常に見えている気がした。一人の作家が語ることのできる物語には限りがある、とは誰の言葉かは忘れたけど、「チョコレット」も「星を売る店」も「黄漠奇聞」も、『一千一秒物語』のある種の変奏曲なのかもしれないと思った。
「弥勒」という作品にこんな一文があった。
『目指す人間とは何であるか?それはこの自分自身である。固有の色合いがある、振動的な、即ち生きている、真鍮の砲弾や花火仕掛の海戦に心を惹かれている自分自身である。その最も自分らしい場所に立ち帰らねばならぬのではないか。』
弥勒は作者の自伝的小説というかエッセイで、この文章に稲垣足穂の意思が収斂しているような気がした。
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- 感想投稿日 : 2023年4月13日
- 読了日 : 2023年4月13日
- 本棚登録日 : 2023年4月10日
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