奇妙な設定で、示唆に富んだ「変愛」の話ばかり集めたアンソロジー。次は何が出てくるのかわくわくした。
以下、特に好きだった作品。
・彼氏島 ステイシー・リクター
冒頭のギャルの1人語りが、急に「船のみんなが死んじゃったことについては、ほんとに気の毒だと思ってる。」とギアチェンジするところから、グッと引き込まれた。
主人公が「おおぜいの彼氏志願者に囲まれて暮らしてる社会」が嫌になってしまう状況に、今選ぶ側にいる男性も、実際幸せなのか、女も支配階級になったら男を虐げてしまうのか、と考えさせられた。
・スペシャリスト アリソン・スミス
寂しさとか、孤独のような気持ちを、「体の中にブリザードの吹き荒れる広大な空虚をもつ娘」というぶっとんだ設定に落とし込んでいるのがすごい発想すぎ。
1番伝えたい痛みについての質問をやっとされた時、アリスが答えられないのが、辛さを人に伝える難しさを暗示しているようでよかった。
・ヴゥードゥー・ハート スコット・スナイダー
1の時から、この人の作品が1番好き。
広い家の中での、恋人とのトランシーバーでのやり取り、裸で螺旋階段を上がり、青空を背景にしてのメイクラブ、恋人と託児所の当番をした時の、トンネルの中での一幕と、鮮やかな映像とともに心に残るシーンがたくさんある。
この人の作品をもっと岸本さんに翻訳してほしい!
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年8月21日
- 読了日 : 2021年8月21日
- 本棚登録日 : 2021年8月21日
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