権力と栄光

  • 早川書房 (2004年9月15日発売)
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感想 : 1
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面白いねえ。1930年代共産革命時、禁教令のメキシコを舞台に、女と関係を持ち私生児をもうけ、ウイスキー坊主と呼ばれたアル中の神父は逃亡する。そして教会を悪と信じ追いかける警部。最後に神父は大きな決断をする。戒律を冒した神父は神聖か堕落か。誰もが何かの思想を信じ対立する世の中で神ではなく人が作った戒律やルールが生み出す歪みと運命。キリストも共産主義の神も一人ひとりの心の中にいて自分が信じる姿をしているもので、教会など他人の考える神は大枠こそ同じでも個人が信じる神と同じではない。神父は言う、人は善悪を選ぶのではなく運命が2つのどちらかを強制的に選ばせそれが後になって社会の第三者たちに善か悪か決められていく。個人にとって神の意思はつかみどころがない。それでも最後は「どんな臆病者にだって義務感はあるんだよ」それが矜恃であり神聖であり義務感なのだ。第三者の評価ではなく大事なのは自分個人にとっての神に出会えるかなのだろう。そして遠藤周作はこれに影響を受けて「沈黙」を書いた。グレアムグリーンの最高傑作(^^)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年11月23日
読了日 : 2020年11月23日
本棚登録日 : 2020年11月23日

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