漢字: 生い立ちとその背景 (岩波新書 青版 747)

著者 :
  • 岩波書店 (1970年4月25日発売)
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本棚登録 : 453
感想 : 31
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 漢字と呪術のつながりを論じた本だが、まるでパズルのように作られた漢字を、呪術の視点から解いていくところは爽快で、読んでいて快楽さえもたらされる。
 伏せるという字は、人の前で犬がふせてうかがっていると言われているが、犬を埋めて呪いを防ぐための字であると論じられるところなど、古代エンターテイメント世界の広がりを感じられて、大興奮する。
 天災ばかり起こる時、呪術の長でもあった王が最終的に殺されてしまうなど、「呪」をテーマとして、古代社会を浮かび上がらせる筆致は見事だし、万葉集との関連性もちょくちょくと書かれていて、面白い。
【ここに歌われている客神は、おそらく殷の祖神であろう。古代にあっては、国を滅ぼすことは、その民人を滅ぼすことではなかった。その奉ずる神を支配し、その祖霊を支配することであった。神霊は滅ぼしうるものではない。それで滅亡した国の子孫を残し、その聖処の社には光をおおい、先祖の祭礼はつづけさせた。王朝のまつりのときには、その神霊にもまつりに参加させて、その威霊を新しい王朝のためにささげさせるのである。それで異族神は、王朝の祭祀に招かれ、舞楽などを献ずるのであった】P69 とあるのは、白川は日本のこともきっとイメージしていただろうと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国の学び
感想投稿日 : 2019年11月4日
読了日 : 2019年11月4日
本棚登録日 : 2019年11月4日

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