子どもは形が小さいだけの大人。
教育関連の仕事をしていて、こういうふうなことを語れる人を私は尊敬しており。子どもだって、毎日いやなこともありうれしいこともあり、悩んだり苦しんだり、じょうずにごまかしたりしながらやり過ごすこともあり、いろんな理不尽や矛盾や闇や毒にまみれながら、生きている。
たいていの児童書は、そこを端的に描いて、でも希望があるよ、がんばろうよ!乗り越えたからでこその今だね!笑顔がいいね!なんてなことを書いて終わる。でもこの本はちがう。煮え切らないものを抱えながら言葉や態度にできないもどかしさ、人のもつ、汚い汚い部分に気づいたときの恐ろしさ。そんなものを大人のそれと共に丁寧に描き、最後まで、希望は描かない。あとは自分で考えろ、だ。
読み終わった直後は、なんでこんなものを、那須さんの文庫なんて珍しい!なんてノリだけでブックオフにて買ってしまったんだろう、となんともいえない苦い気持ちになったけど、あさのあつこさんの解説が秀逸で救われた。感じたことが言葉になってて、涙しながら読んだ。
那須正幹といえば「ズッコケ三人組」シリーズだけど、あれだって、すごくリアルな少年を描いているからこそのベストセラーだ。
ときどき、那須さんのダークな児童書に出会う。『そうじ当番』はいまも家にある低学年向けの、毒ある児童書だ。
子どものリアルが、ここにもあった。
そして大事なこと。文章が美しい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2018年11月1日
- 読了日 : 2018年11月1日
- 本棚登録日 : 2018年11月1日
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