平気でうそをつく人たち: 虚偽と邪悪の心理学

  • 草思社 (1996年12月1日発売)
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本棚登録 : 970
感想 : 102
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10年くらい前に読んでいた本書を最近再読しました。
ペック博士の愛に満ちた筆致に涙ぐむところさえあります。
この本でいう「邪悪な人間」が、どのような分類に属するのか、他の書籍との比較検討のために拾い上げてみます。版によってページにずれがあったら済みません。
177~178ページによれば、精神病理学的障害として分類を試みた場合には「人格障害」というカテゴリーの中のサブカテゴリーにある「自己愛的(ナルシシズム的)人格障害」のひとつの変種であると思われるとのことです。
99~100ページでは、「邪悪な人間」になる原因は良心の欠如ではないと思われ、精神病質者または社会病質者と呼ばれる人たち(要はサイコパスのこと)とは全く異なるという見解を明示しています。
「自己愛的人格障害」の中で「邪悪性」を「変種のひとつ」として特に分類して考えようとしているわけですが、別の書籍でサンディ・ホチキス著「結局、自分のことしか考えられない人たち」に書かれている「自己愛人間」も充分に危険な人間であり有効な対策が「逃げるしかない」くらいの人たち(かなり大胆な要約ですが)ですので、「邪悪な人間」と言う用語で区別する実際上の必要性がどの程度あるのかは、良く判りません。
また、ここで言う「邪悪な人間」や「自己愛人間」というのは、また別の書籍になりますが、キャロル・ダヴリス&エリオット・アロンソン著「なぜあの人はあやまちを認めないのか」で詳述されている、万人に共通の心理である「認知的不協和」による「自己正当化」の問題が強く現れている人間でもあるように思えます。同書には、自分は立派で価値のある人間だと思っている自尊心の高い者ほど激烈な加害者になるという主旨の記述もありますので、これなどはまさしく「邪悪な人間」や「自己愛人間」の危険性をもたらす原因の中核を成す部分であるように思えます。
本書「平気でうそをつく人たち」は、原著が1983年と既に四半世紀以上も前に書かれた本であり、愛に満ちた洞察力によって不朽の名著としての価値を有しているものであると思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2009年12月31日
読了日 : 2009年12月31日
本棚登録日 : 2009年12月31日

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