子の無い人生

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2016年2月27日発売)
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感想 : 54
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【307冊目】負け犬の遠吠えで一役有名になったエッセイスト・酒井順子さん。

「負け犬」とは、未婚・子なし・三十代以上と定義したが、読者の声で、結婚しているのに子どもがいない人について思いを馳せたそう。

酒井さん曰く、出産が婚姻と強く結びつく日本では、結婚それ自体では結婚が完成したとはみなされず、1人産んでも「2人目は?」とのプレッシャーにさらされ、2人産んでようやく結婚が完成したとされるのだそう。

以降、子の写真入り年賀状から入り、沖縄伝統文化における独身女性の立ち位置、女性政治家、不妊、養子縁組、子なし男性などなど、様々な角度から子なし族のことを考えている。

気になる話題だったので手に取ったが、エッセイをきちんと読むのは入試問題以来じゃないだろうか笑。ひとつの話題が7ページぐらいなので、さくさく読めるし、文体もどちらかというと話し言葉に近く、こりゃあハマりそう。

ただ、未婚とは異なり、子なしは生殖能力などのデリケートな問題にもかかわってくるので、当事者の方々が本書をどう読むのかは少し気懸り。筆者は危ういラインを歩みつつも、最後には子なしを肯定するのでまぁ誰も傷付けていないのかな…?

1つ気になったのは、子なし族の看取りを誰がするのかというテーマが全編を通してちょくちょく登場すること。筆者の世代や年齢(1966年生まれ)がそうさせるのかもしれないが、自分が子なし族のとき、そんなことは考えたこともなかった。介護が必要ならお金で解決すればいいし、死んだ後自分の墓がどうなるのかなんて気にしたって詮無い。筆者は、自分の姪が筆者の看取りを嫌々担うのだろうと書いているが、私の場合親戚の縁が薄いせいか、その発想は全くなかった。

あと、やっぱり「子ナシ男性の場合」の項がおもしろかった。筆者も同じ子なしなのにどうしてここまで分かるのだろうか笑。「子供を持つことに積極的にならない男性というのはすなわち、自分の中の、ロマンチックな部分やナイーブな部分を大切にしたい男性なのでしょう。女性は妊娠することによって、子供に自分の領域が侵食される実感を身体で得るわけですが、男性はそれが不可能。頭でのみ考えていると、どんどん怖くなるのではないか。それを別の言い方で言うのであれば、『自分好き』ということなのです。」
いやぁ、心当たりあるわぁ…苦笑。自分のことが好き、自分のしたいことをしたいというのは当然の感情であり、それを捨て去れという方が無理な話。私の場合、子供ができてみて初めて、自分以外の個体を自分以上に大切にするという感覚が理解できたわけです。ただ、いわば自己愛からの離脱というのは、冷静な頭じゃ難しいかもなぁ。

もうひとつ印象に残ったのは、若い時は自分だけのために生きることができるが、歳を取ると誰かのために生きたいという願望が生まれるということ。それを理由として子を産むのはエゴであるも筆者自身認めているが、その年齢になると感じる埋め難い空虚な気持ちがあるんだろうなぁ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 妊娠・出産・育児の本
感想投稿日 : 2022年12月31日
読了日 : 2022年12月31日
本棚登録日 : 2022年12月31日

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