どろぼんはどろぼうの天才です
背が高くもなく低くもなく
ふとってもやせてもおらず
十代かもしれないし五十代かもしれず
たしかに会ったことがあるはずなのに
顔も声も思い出せなくなってしまう
そんな男です
ですから千回もどろぼうしているけれど
ケイサツにつかまったりおいかけられたりしたことがありません
それだけでなく、どろぼんがぬすむのは
持ちぬしが、それがあったことさえおぼえていないもの
なくなったことさえ気づかないものばかり
どろぼんはそういうものの声を聞ききとることができるので
耳をすませて声のみちびくままにどこへだって忍び込み
だれにも気づかれることなくぬすみ出してしまえるのです
そんなどろぼんを刑事のぼくはつかまえてしまいました
さあ、どろぼんの取り調べがはじまります
人が信じられなくなった人に贈る心ふるえる物語
詩人斉藤倫の初の長編物語、2014年刊
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ひげうさぎ文庫
- 感想投稿日 : 2018年9月11日
- 読了日 : 2018年9月8日
- 本棚登録日 : 2018年9月11日
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