ファイアスターター 上 (新潮文庫 キ 3-1)

  • 新潮社 (1982年9月1日発売)
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本棚登録 : 466
感想 : 28
5

誘導能力者の父・アンディと放火能力者の娘・チャーリーの逃亡劇。

宮部みゆきの「クロスファイア」が好きだったので、オマージュというか元ネタというか、こちらはどんなんかなーと読みだす。ちなみにスティーブン・キング初読み。

よかった所:
・秘密組織からの逃亡ってド定番だけどスリリング。
力の副作用に息も絶え絶えになりながら娘を守らんとする父と、自分の大きすぎる潜在能力に慄く娘の叫びと苦しみがよくよく伝わる。
・中盤で出てくる農場主・アーヴ氏。
とばっちりで撃たれ家も燃やされて、それでも災いを呼び込んだ親子を責めずに道を開く。自分だったら奥さんみたいに「近寄らないで!」って言っちゃいそう(そして後から後悔しそう)だけど、「お父さんを守っておあげ」の所でワーッときた。こういう深さをツメアカでいいので身に着けたいなと思う。
・殺された妻・アンディ。
追憶の中にしか出てこないのだけど、臆病で母になっても繊細な人だったんだろうなと思う。実験参加は間違いだったけど、出会えたことは間違いじゃなかった的な。亡骸の目が見返してきた時の連想が彼らの美しい家族、砕けた幸せを雄弁に語るなあと。最初から父娘設定よりぐんと悔しさとか憤怒とかが湧く気がする。

よくなかった所:
よくなかったというか個人的にこうだったらいいのになーと思う所。
・字が小さい!昔(H12年)の本だからか慣れないサイズのフォント。もうちょい読みやすい新装版とかないのかーないのかー。
・アンディとチャーリーのネーミング。
洋もの詳しくなくて、アンディ=女の子、チャーリー=男の子の先入観が。慣れるまでチャーリーブラウンの顔が浮かんでどっちがパパだったか混乱した。できたらなるべくアホにも分かりやすいネーミングでお願いしたい。

総評:
面白かった!時代は古いけど本質は古びてない。えっ?嘘?!ギャー!!って所で「下巻に続く」なのでこれは読むしかないでしょう。インディアンの目論見も気になるし。
でも小二の女児には荷の重い話だー。けなげなチャーリーにはできることなら前向きな終わり方をしてほしいものだけど、クロスファイアみたいに悲しい結末しかないんだろうか。うぅんー。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2018年2月26日
読了日 : 2018年2月25日
本棚登録日 : 2018年2月25日

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