ペットのベタと夫婦、ゴキブリと少年、猫と妊娠する少女、菌と男女、台湾の蛇と父。
5つのストーリーはどれも感情的で不安定で自己中心的な人間の煩悩や未熟さと、私たちの身近な生物達の本能に基づく生態との対比が「パートナー」としてというより「共存」という関係性で描かれている。
動物や虫や菌にもそれぞれの生存戦略や考えがあって生きているのに、私たちは自分の心に余裕がある時しかそこに思いを馳せようとはしない。
自分の人生ばかりに焦点が当たっている時は、すぐ近くにいてくれる人達のことさえ考えることができなくなるのだから、そのほかの生き物のことなんて意識できないのは当たり前のことかもしれない。
そんな自分にも思い当てはまる自己嫌悪みたいな気持ち、日常の人間関係の中で芽生える憂鬱や絶望や不安な気持ち、さらにその中でほんの少しだけ抱く希望やさらなる絶望、なんかそんな人間ならではの自分ではどうしようもできない複雑な感情を読みながら抱くことこそが自分もしっかりと人間なんだなと思ったり。
うまく言葉にできないけど、なんか不器用な人間というものが腹ただしくもなり、愛おしくもなった。
翻訳者さんのあとがきを読んでメキシコ人作家の物語をもっと読んでみたくなった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年1月28日
- 読了日 : 2023年1月27日
- 本棚登録日 : 2023年1月12日
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