仏の心で鬼になれ。:「上司道」を極める20の言葉

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  • WAVE出版 (2012年10月25日発売)
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”著者 田中健一さんは、東レで佐々木常夫さんの先輩にあたる方。その佐々木さんから「東レインターや蝶理の再建をおこなった際の「上司力の中身」を伝えてほしい」と懇願されて完成したのが本書。

第一章で語られている次の言葉が、田中さんの実践してきた「上司道」を端的に言い表しているように思う。
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最初に、上司にとって一番大切なことを言っておこうと思う。それは、
「上司には部下を幸せにする義務だけあって、不幸にする権利はない」
ということや。(p.41)
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僕はたぶん逆立ちしても何年修行しても、田中さんのような迫力やカリスマを身につけることはできないだろう。でも、それでいいのだとも思う。上の言葉を心の奥にしっかりと刻んだうえで行動すれば、自分なりのスタイルで「仏の心で鬼に」の域に達することができるはず。

今はまだ想いが足りない。だから必要以上に優しくなったり甘くなったりしているに違いない。
「幸せにする義務」について、本気で考えていこう。


<読書メモ>
★本来、仕事とは厳しいものだ。競合がひしめくなか、並大抵の努力では業績を上げることなどできはしない。だから、上司は「鬼」にならねばならない。「鬼」になって部下を率いなければ、生き残ることもできない。そして、結果を出せなければ、部下を不幸にしてしまうことになる。ときに部下に嫌われても「鬼」になることこそ、真の「優しさ」なのだ。
 上司は、仏の心で鬼になれ。
 それこそが、上司の王道なんだ??。(p.2-3:はじめに)
 #不幸にしないために鬼になる。なるほど!

・「では、給料を……」
 「無給で行きます。期限は一年です」
 「私はつまり、蝶理の社員の首を切りに行くのですよね。ぬくぬくと給料をもらいながら首切りなんて、誰も言うこと聞かんでしょう」
 「いえ、私ひとりで行きます。今、出ている人は皆、本社へ引き揚げてください」
 「お言葉ですが、親会社が人を出すから何年たっても再建できないんやないでしょうか。(略)蝶理の人たちが自分たちで立て直すという気持ちにならんと、再建はできません!」(p.26-28の田中さんのセリフを抜粋)
 #この覚悟!

★最初に、上司にとって一番大切なことを言っておこうと思う。それは、
 「上司には部下を幸せにする義務だけあって、不幸にする権利はない」
 ということや。(p.41)

・何はさておき大事なのは礼儀や。これは仕事をするうえで絶対に必要なことだ。礼儀を知らんヤツは仕事もできん。
 (略)
 逆に礼儀を失する者は、話を好意的に聞いてもらえんから、社内でも社外でもトラブルが絶えん。部下を、こういう人間にしてはいかんのや。(p.49)
 #ん?、もっと強くここは主張しないとだなぁ。

・仕事に真剣に向き合っている人間は、それこそトイレでたまたま隣り合わせになって、「君のとこ、この頃どうや?」とちょっと聞いただけで、「いや、今、これで苦労してます……」とパッと答えが返ってくるものなんだよ。
 その人の頭をスパっと切ったら、その問題点がピヨーンと飛び出してくる。一生懸命に仕事をしていて、粘り強く考えてる人間というのはそういうもんや。(p.59)
 #真剣、一生懸命とはこういうもの。

・部下のモチベーションを上げるにはどうするか。
 インセンティブを出したり、叱咤激励したりするのも大事だが、モチベーションを上げる邪魔をしているものを取り除いてあげることが重要だ。(p.93)
 #「金利」という邪魔者がいたから。銀行に優先株を引き受けてもらって得た金を、そっくりそのまま金利の高い銀行への返済にあてた。

★「行動指示」をするな、「結果指示」をせよ(p.107)
 #「ポリエステルを持って帰って来い」「調達できるまで、日本に帰ってこなくていい」がそのいい例(キツイ例?)

★部下を育てようと思うなら、上司は「鬼」にならんといかん。
 能力より高めの目標を出して、弱音に妥協せず、尻を叩く。
 その苦しまぎれのあがきの中から、部下は新しい飛躍の途を発見する。
 そのとき、部下は「自信」という、一生の財産を手に入れることができるんや。(p.113)
 #だから、中途半端なあまちゃんはいかん。鬼になれ。

★何も部下に対して「心を鬼」にするのではない。「人に好かれたい」と心の底で願っている自分に対して「心を鬼」にする。
 それが、上司の基本だよ。(p.123)

・「必ず守ってやるから、悪いニュースは早めに報告してくれ」
 (略)実際にトラブルを適切に処理して、部下を守ってみせたとき、はじめて部下は上司の言葉を信じてくれる。だから、僕は着任して「トラブル」が発生したときには、「チャンスが来た!」と考えるようにしていた。(p.136)

・僕がいちばん素晴らしく感じたのは、ひとつの案件も課長のところで眠っていないことだった。それが常にベストとは言わぬが、課の情報がいつも複数人に共有されていると、これほど効率が上がるものかと思ったもんだ。(p.146)
 #自身のにぎりかた、抱え方を、見直してみるべし。

★上司の本当の仕事は、目先対応の仕事ではない。
 市場や会社全体の動向を見据えたうえで、中長期的な方針をしっかりと確立する。その方向性を部署全体で共有したうえで、次々と舞い込んでくる仕事を部下に適切に割り振る。そして、部下一人ひとりが気持ちよく、集中して仕事に取り組めているか、部署がフル稼働しているかを確認する。ところが、目先対応の仕事に忙殺されていると、こうした本質的な仕事がおざなりになってしまうのだ。(p.149)
 #どきっ!

★その方からよく聞いた言葉を思い出した。
 「田中君、愛情をもって仕事をしろ」
 僕は若かったから、「そんな甘いこと言って、それよりも実績でしょう、数字でしょう」とずっと思っていたもんだ。
 だけど、違うんだな。感謝を求めず、わけへだてあく部下を愛する。それこそが、大きな仕事をするためには大切なんや。(p.178-179)
 #世話になった人間ほど感謝などしない。逆に陰口を叩いている者もいる。それでもなお…

★人の意見にしっかり耳を傾けて、考えぬいた結論であれば、自分の腹のなかにそれなりの手応えがあるはずや。その手応えがしっかりしているならば、意を決して判断を下すことができるはずや。もしも、自信がないのならば、それは考えが足りんのだよ。オレは考え抜いた、もうこれ以上のアイデアは出てこない……。本当に考えぬいたときには、こういうある種のあきらめがつくと同時に、腹も座ってくるものなんだよ。(.189)
 #まだまだ、まだまだまだ、考えが足りてないわ。

・東レは繊維産業の中では最も川上に位置してる会社なんだが、その晩、僕が最初に開いた大学ノートに書いてあったんは、忘れもしない紡績機の設計図やった。それも、課長が自分の手で書いたものである。自分の仕事には直接は関係ないことを、それこそ猛烈な情熱で勉強してるんや。あとのノートも化学あり、経済あり、底知れぬ勉強ぶりである。呆然としている僕に、上司はこう言った。
 「ええか、自分たちが作ったものが、どこへ売られて何に変わり、最終的にどういう形で消費されるか。そこにそれぞれ、どんな問題があるのか、わからんと商売できんぞ。文句言う暇あったら勉強せい」(p.216)
 #押入れの中から大学ノート100冊! 圧巻だったろうなぁ。畏敬の念、とはこういうもの。

★我々は、劇的な改革を賞賛する。
 もちろん、組織の危機を脱するリーダーシップは賞賛に値するものだろう。しかし、「劇的なもの」にばかり注目してしまうと、いちばん大切なことを忘れてしまう。
 「戦わずして勝つ」
 これこそ、最上の将軍だということや。
 大手術をせんでも生き延びる、激しい戦闘をせんでも自然に勝ち残る、そういう組織こそ最高の組織だし、そういう組織をつくるのがリーダーの仕事や。
 そのためには、ヒーローはいらん。
 必要なのは、「免疫力」だ。
 (略)
 いちばん大切なのは免疫力をつけて、医療が不要の身体を維持することにある。そういう組織にするのが、会社の第一義の目標と思う。(p.236)

・これは、若い皆さんにも承知しておいてほしい。皆さんご自身がどう思われるかは別にして、日本の社会では和を乱す人を好まない、ということを。何をするにしても、この点を念頭においておくと事がスムーズに運ぶ。
 大志を持った人は、上へ昇る時に抵抗が少なくなるように心がけてほしい。そのためには、「和」の念仏を唱えながら登って行くと、険しい道が少しは楽になる。
 #最後の最後に、意外なまとめ! みなが田中さんと同じではなのだから、自分らしいキャラでやれってことかな。


<きっかけ>
 タイトルにひかれて購入。
 佐々木常夫さんの『これからのリーダーに贈る17の言葉』で紹介されていたので、続けて読むことに。”

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年8月15日
読了日 : 2013年1月1日
本棚登録日 : 2019年8月15日

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