秘密保護法対策マニュアル (岩波ブックレット)

著者 :
  • 岩波書店 (2015年3月6日発売)
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秘密保護法についての解説と、主にジャーナリストや調査を行う個人についてのアドバイスがされている本。

著者はこの法律に対して廃止を主張する論者だけれど、指摘される問題点は大きく2つある。

1つは「秘密」の適用範囲について。
防衛省管轄の安全保障、外務省管轄の外交、警察庁管轄のテロ活動と特定有害活動(スパイ活動)に関わるものが「秘密」の対象となるが、政府による恣意的な秘密指定に対する懸念について書かれている。また、「共謀」「教唆」「煽動」といった「秘密を知ろうとした」というだけで処罰の対象となる点も、広く嫌疑をかけられる可能性が高まるとしている。
また、仮に海外で報道などされていても、政府が「公になっている」と認定しなければ秘密指定対象となるという(つまり罰則を受ける可能性がある)。

2つめは国際的な規範との整合性について。国際人権規約では、「国の安全」を理由に情報を制限する場合、「その驚異の性質、(中略)具体的かつ個別的に示さなければならない」となっており、秘密保護法はこの基準を満たしていないと指摘している。
また「ツワネ原則」では、国家機密について守秘義務を負っていない一般市民やジャーナリストが秘密情報を知ったり広めたりすることで処罰されてはならないとされているという。
また国連の自由権規約委員会も秘密指定対象が曖昧な点などについて懸念を表明し、「あらゆる措置」を求める勧告を出したという。

3つめは「適性評価」という制度について。これは「秘密」を扱う者を対象に行われるチェックである。本人んの家族、同居人の氏名、生年月日、国籍、住所などがチェックされ、また海外とのつながり(海外赴任や留学、ホームステイの受け入れ)は適性評価に不利になる可能性があるという。また適正評価を受けることは義務ではないが、これを拒むことで不利な扱いを受けたり、逆に嫌疑をかけられる可能性もある。

さらには、満州事変において情報が秘匿された事例を挙げ、政府に不都合なことを秘密にすることを禁止していないことについて批判している。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 法律
感想投稿日 : 2015年6月13日
読了日 : 2015年6月13日
本棚登録日 : 2015年6月13日

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